公正取引委員会は12月27日、価格転嫁に関する「優越的地位の濫用緊急調査」の結果を公表した。

 公取委は今年6月、受注者8万社に対して書面調査を実施。名前の挙がった発注者4573社と、その回答や関係省庁などからの情報提供で多かった業種の発注者2万5000社を含めた約3万社に書面調査を行い、コストの転嫁状況などについて回答を求めた。

 これらの書面調査を踏まえ、公取委は任意の立入調査を306件実施したほか、今年9月以降、4573社の中で名前の挙がった数が多い発注者上位50社程度を抽出し、立入調査、独占禁止法第40条に基づく報告命令なども含めたより詳細な個別調査を行った。

 独禁法では、取引上の立場が強い発注者の方から価格転嫁の必要性について協議を行わないことや、転嫁しない理由を書面、電子メールなどで回答することなく価格を据え置くことは「優越的地位の濫用」に該当する恐れがある。

 公取委では調査の結果を踏まえ、それらの行為が確認された企業4030社に注意喚起の文書を送付した。また事業活動への影響が大きい取引先で、受注者から多く名前が挙がったドン・キホーテ、日本アクセス、三菱食品など、発注者13社・団体の名称を公表した。なお公表は法令違反を認定したものではない。

 今回の調査では、値上げ要請を受けたと回答した企業がGMSや百貨店などの「各種商品小売業」で93.1%、食品スーパーなどの「飲食料品小売業」で88.8%。さらにそれらを100としたときに、価格を引き上げた商品・サービスの割合が100%だと回答した企業は、「各種商品小売業」で85.9%、「飲食料品小売業」で85.0%(表参照)だった。

 一方で、値上げ拒否の理由について文書やメールなど記録に残る書面の形で回答したかどうかについて、7割以上に回答したと答えた企業の割合は「各種商品小売業」で59.1%だったのに対し、「飲食料品小売業」は32.1%にとどまっており、調査対象の22業種の中で2番目に低く、全く回答していないと答えた企業は43.8%を占めた。

 公取委では、受注者から取引価格引き上げの要請がなかったことから価格交渉で協議することなく価格を据え置いている状況が「問題につながるおそれのある事例」としている。受注者側からは、発注者に対して「取引を切られてしまうなど影響を考えると実際に申し出ることは難しい」「発注者に値上げの可能性について相談したところ、無理と言われたので申し入れを行うこと自体断念した」「発注者と連絡がつながらないため取引価格の引き上げ要請自体ができない」「担当者から値上げ容認の返事をもらったが、取引の確認書では従前と変わらない取引価格のままだった」などの意見が上がっている。

 公取委では、今後も優越的地位の濫用について問題事案については引き続き事業者名の公表を伴う命令、警告、勧告などを行いつつ、価格転嫁に向けては発注者側から協議の場を設けることが重要として周知を行っていくとしている。