コロナ禍の先行き不透明な中での船出だ。スターゼンの横田和彦専務取締役営業本部長が、4月1日付けで代表取締役社長に就任した。中津濵健代表取締役会長兼社長は取締役会長に退く。就任会見で、横田新社長は「ウィズコロナの状況は相当長い期間続くものと覚悟している」とした上で、「今期は我慢の年と位置づけ、先の飛躍に向けた基礎固めをしっかり行っていく」と決意を示した。
スターゼンが取り扱う食肉市場はコロナ禍の大きな影響で外食・業務用は大幅に縮小。昨年末以降、和牛肉の販売は厳しい状況だ。一方、家庭用は巣ごもり需要などにより味付け商品が非常に好調など明暗が分かれている。
横田社長はコロナ禍の1年間、外食・レストラン向け販売子会社の営業本部への統合で陣頭指揮を執ってきた。商談の相互乗り入れや焼肉業態向け拡販専従チームの編成などを行い、商品在庫情報の共有や物流の再構築で成果が出始めており、今期から営業本部長に就任した池尻尊広執行役員の下でさらに強化する考え。営業面ではコロナ禍で苦戦を強いられている外食や業務用卸、ホテルなどに対し、商品企画をはじめ、テイクアウト向け商品の提案を強化。7月に開催予定の東京オリンピックの需要に合わせて牛肉を売り込む。
海外事業では、食肉処理場を併設した工場の機能強化と合わせて輸出を推進する。一方、輸入については23年のソーセージ、28年にベーコンやハムの関税撤廃を控えており、「スターゼンならではの商品を出していかないと支持を失う」(横田社長)という危機感を持って、商品開発などを進めていく。
横田社長が「新体制の強化ポイント」と位置づける物流では、今期から物流本部を設置し、営業副本部長を務めていた髙濵良1取締役が物流本部長に就任。全国に400台以上ある自社トラックの排出ガス削減のほか、人手不足や高齢化に加えて、24年にはドライバーの労務管理が厳格化される「24年問題」への対応として、グループ全体の物流体制の効率化に向けたDXを推進する方針だ。
中津濵会長が「感性が豊かで10分経験を積んだ。今後のスターゼンを発展させてくれる」と期待する横田社長は就任にあたり、同社の経営理念に「スターゼンで働いてよかったと思える会社にしよう」を追加した。その狙いはコロナで変化した社員の帰属意識を高めて、中津濵会長が掲げた「チームスターゼン」を進化させることにある。商品、海外、物流の各方面で盤石の布陣で、横田新体制が動き始めた。
(冒頭写真 左から池尻尊広執行役員営業本部長、鶉橋正雄常務取締役海外本部長、横田和彦社長、髙濱良一取締役物流本部長)