コロナ禍でネットスーパー需要が高まったこの1年。イトーヨーカ堂ではコロナ前から準備を進めていたサービス面の改良で利便性を向上させた。今第3四半期(2020年3月~11月)の売り上げは267億円。店舗閉鎖に伴い前期比では31億円減少しているものの、「最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月以降は新客が増え、昨冬から今年にかけてはリピート利用が増えている」(セブン&アイHD)という。

 昨年は6月に10X社と連携して、アプリ版をリリース。ウリは「今日のおすすめレシピ」で、材料と作り方を表示。もしこれを作りたいと思えば、それぞれの材料と商品が紐付いており、必要な商品をすぐ「カートに追加」することができる。またマイリストで過去の購入履歴の閲覧や、よく買う商品のお気に入り登録も可能。使いやすさにもこだわったことで、従来ネットスーパーの買い物利用時間は1回に20分ほどだったのが、アプリではその半分に短縮されたという。

昨年6月にリリースしたアプリ版

 アプリに続き、翌7月にはサービスの仕様を大幅に変更。まず注文完了までの流れを見直し、先に配達時間を指定してから商品選択に移行するよう順番を変更した。これまでは商品を吟味して選択したものの、肝心の届けてほしい時間が空いておらずお客が利用を断念するケースあったが、これによりそうした心配を解消した。

 さらにコロナ禍で需要が高まった首都圏と地方とでサービス形態を分け、前者(サービス実施店舗全112店舗中、58店舗が該当)に対しては配達日指定可能日数を2日後までから7日後までに延長。計画利用の使い勝手を高めつつ、一方で配送料を110円から330円までの変動性に切り替え、サービス利用の平準化を狙った。

 ただし現状、変動性の効果は限定的。利用状況は昨年4月のピーク時と比べれば幾分収まってきているものの、土日や平日夜の配達時間は依然として人気が高く、現状のキャパシティーでは「まだまだ改善の余地がある」(セブン&アイHD)という。

 収益性の低さは引き続きの課題だ。改善の余地があるのが物流。現状は外部委託で1時間あたり何件といった固定での契約だが、少ない受注件数の時間帯に全体を合わせると、機会損失を招いてしまうことから、今後は受注の変動に合わせる形で「物流のマッチングサービスのようなことも今後必要になってくるのではないか」(セブン&アイHD)とみている。

 もう一つが店舗内作業だ。現状のオペレーションは、売り場で複数注文分をまとめてピッキングし、作業場で再度注文別に再びピッキングし直す二重ピッキング。「売り場からのピッキングをなくせば作業効率は高まる」(セブン&アイHD)と考えており、手立てを検討していく。

 コロナをきっかけに増えたお客をつなぎとめつつ、いかに収益性の改善を図れるかが今年は問われそうだ。

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