ESG(環境・社会・ガバナンス)で企業を評価する消費者や投資家の存在感が高まっている。こうしたすべてのステークホルダーに向けて、ユニ・チャームでは10月22日、新中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」を発表した。企業理念「NOLA & DOLA」「共生社会」を実現するために、公正で透明性の高い企業運営「ユニ・チャーム プリンシプル」をベースに、「私たちの健康」「地球の健康」「社会の健康」を守る.支える三つの健康軸を柱に構成。20の重要取り組みテーマを設定し、2030年の目標達成を目指していく。
特に「地球の健康」の項目では、使用済み紙おむつを新たな紙おむつに再生するリサイクル事業を推し進める。使用済みの紙おむつから原料のパルプを取り出して再び紙おむつを生産。使用済み紙おむつを完全に殺菌し、新品と同等の品質に戻す技術も開発した。今年度から東京都と組み個別に回収し、都内から実験を開始する。リサイクルセンターなどに設備を導入し、22年には再生パルプを使用した紙おむつの実用化を目指す。30年までに全国で10拠点の設備を設置する予定だ。
「私たちの健康」の事例では、マレーシアで蚊を媒介とするデング熱が流行していることから、蚊を寄せ付けない世界初のアンチモスカプセルを紙おむつに搭載。予防可能な感染症を抑制する活動に貢献する。
発表会での冒頭、ユニ・チャームの高原豪久社長は、「当社では共生社会を実現するため人々や社会を守る〝いろいろな形のやさしさ〟を中長期ESGビジョンの取り組みテーマとして30年をゴールに設定。具体的には国内外の現地法人経営をさらに推進し、地域経済に貢献する原材料を用いた商品やサービスを展開。また2030年を目標に当社事業で用いる電力をすべて再生可能エネルギーに切り替えます」と意気込みを語った。
同社は20年が「第10次中計」「Eco Plan2020」の最終年だ。創立60周年を迎える来年は新たな「第11次中計」始動の節目の年となり、それに沿った中長期ESG目標を設定する。その重要課題の策定にあたっては、多方面から情報を収集し、513項目のロングリストから44項目に整理。自社視点評価では国内外マネージャー以上の幹部社員、役員約900人の声を収集。社外視点では56団体に参画を依頼し、32団体から回答を得た。その後に執行役員のワークショップを経て、重要課題を指定に至った。高原社長は、「当社1万6000人強の社員を代表する国内外の管理職以上の役職者すべての意見を反映。グルーバルな視点で現地法人のもとに速やかに実行に移していきます」と述べた。
(画像は高原豪久社長)