カスミは3月26日、茨城県庁(水戸市)の2階に無人店舗「オフィスマ茨城県庁店」をオープンした。役所や工場、事務所などの小スペースに棚を置いて展開する、同社の新事業の第1号拠点。お客自らが商品をスキャンし、決済まで済ませるアプリ「スキャン&ゴー」の仕組みを取り入れ、常駐スタッフを置かずに運営する。
売り場面積は約30㎡。カスミ本部での実験を経て、オフィス需要の高い菓子、飲料、カップ麺など約500品目を展開した。実験店では品揃えしていたおにぎりやサンドイッチなどは扱わないが、レンジ調理で食べられるおにぎりやパスタなどを冷凍ケースに用意した。また雑貨のほか、地元茨城の名産品も並べている。売り場づくりや納品、商品管理は全てカスミが負担。法人側の費用は基本無償だ。
利用客はユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)のアプリでQRコードを読み取って入店する。商品のバーコードをスキャンし決済画面に進めば、紐づいているクレジットカードで決済が完了。レジに並ぶ必要がなく、スピーディーに買い物が済ませられる。
オフィスマの機能はこれだけではなく、県と連携し、農業ベンチャー「エムスクエア・ラボ」と協業。同社が展開する定時運行の農産物直送サービス「やさいバス」の受け取り・集荷拠点としても活用する。無人店舗にはIoTロッカーが設置され、やさいバスで農産物を注文したお客はここで受け取りができる(やさいバスの注文・決済は同社サイトで行う)。カスミの配送トラックが農産物の輸送を請け負い、納品の際に農産物の積み下ろしも行う仕組みだ。
やさいバスの運行は4月1日からスタートしている。今後、水戸市からつくば市にかけてのエリア内で無人店舗の開拓を進める。4月中にも10カ所弱の拠点を開設する見込みで、今年度中に40カ所の開設を目指す。一方でカスミの既存店にもロッカーの設置を進め、将来的にはカスミのネットスーパーの受け取り拠点としても活用していく考えだ。
無人店舗の目標日販について、ビジネス変革本部の髙木健一UXデザインマネジャーは、「約3万円。これが十数拠点で達成されてこないと回っていかない。アプリ決済のユーザー確保は大前提」と語る。そこで今後は既存店へのアプリ決済導入も両輪で進めていく方針。現在の導入店は筑波大学店(つくば市)と学園店(同)にとどまるが、水戸、つくばエリアから拡大を進め、無人店と近隣の既存店で相互送客を図りながら認知度向上につなげていく構えだ。