変わる若者の「カッコいい」に応える
「お前、何色?」——。2006年の発売当時、「ギャツビー ムービングラバー」を使う若者の間では、こんな会話が交わされていた。シリーズは商品ごとに容器の色が異なり、使っている容器の色を聞けば、相手がどんな仕上がりを好むのかが分かる。学校では休み時間になると友人同士で鏡の前に集まり、髪を直しながらワックスについて語り合う。ムービングラバーは整髪料という商品の枠を超え、若者のコミュニケーションやスタイリング文化を生み出す存在になった。
それから20年。若者を取り巻く環境も、ヘアスタイリングに対する意識も大きく変わった。マンダムによると、10代、20代の男性には、友人がどのワックスを使っているのか尋ねることさえ恥ずかしいと感じる人もいる。身だしなみやスタイリングの話も、気心の知れた友人との間で交わすことが多いという。その一方、インスタグラムやユーチューブなどで美容師やインフルエンサーが発信する動画を参考に、スタイリング方法を細かく研究するなど、髪への関心は高い。
ヘアスタイルそのものも変わった。同社調査では、17年頃には存在感のある毛束やダイナミックなシルエットを求める層が6割以上を占めていたが、24年には細かな動きや自然な質感を求める層がボリュームゾーンへ移った。見た目はナチュラルでも、実際には細かな毛束や髪の動きまでつくり込む。ワックスに求められる機能も、「強く動かす」「形を固める」ことから、「細部まで動かしやすい」「形だけでなく質感まで長く保つ」ことへ移っている。
こうした若者の動向について、同社コアブランドマーケティング部の柳井一真主任は「関心が薄れたのではなく、スタイリングの見せ方や行動が変わりました」と説明する。そのインサイトへの対応が、発売20周年を機に実施した「ギャツビー ムービングラバー」の大規模リニューアルの出発点となった。
8月24日に発売された「ギャツビー ムービングラバー」のワックスのラインアップは、ロングセラー6品に新製品4品を加えた全10品。シリーズ共通で、引っかかりを抑え、ムラなくなじませることで髪を狙い通りに動かしやすくする「スムース処方」と、つくったフォルムと質感を根元から毛先まで1日キープする「形状&質感キープ処方」を採用した。
開発ではサロンの意見も取り入れながら、多くのアイテムで100回を超える試作を重ね、細部まで動かせる操作性と、つくったスタイルを保つ持続性という両立の難しい二つの性能を追求した。
パッケージはシリーズの象徴であるカラフルな印象を継承しながら刷新した。商品選びに迷う初心者を意識し、ラベルには仕上がりをイメージしやすい実写モデルを採用。どんな人に適した商品なのかも明示し、店頭で自分に合ったワックスを選びやすくした。容器・包材も見直し、シリーズ全体で年間約65トンのプラスチック使用量削減を見込んでいる。

広告と体験で次世代との接点をつくる
商品刷新と並ぶもう一つの柱が、若者とのコミュニケーションの再構築だ。9月中旬から木村拓哉を起用した広告プロモーションを開始する。木村は06年の発売時にもムービングラバーの広告に登場しており、今回、再びタッグを組む。新しいムービングラバーでスタイリングすることで、まだ見ぬ自分に出会う高揚感を「いい予感しかない。」というメッセージで表現。テレビCMをはじめ、店頭や交通広告などで広く発信する。
さらに9月24日から順次、全国6校の高校の文化祭で体験型イベントを展開する。校内にムービングラバーの装飾を施したプロモーション用トラックを導入し、スタッフがワックスの適量、手のひらでの伸ばし方、髪全体へのなじませ方などをレクチャーする。ポイントは、スタッフが生徒の髪を仕上げるのではなく、生徒自身がスタイリングすることだ。完成後には、そのトラックをフォトスポットとして活用し、記念撮影も楽しめる。
狙いは商品を配布するだけのサンプリングではない。「自分でもうまくスタイリングできた」という成功体験と、それによって生まれる高揚感までを届けることにある。今の若者は、商品そのものだけでなく、それを使って得られる体験にも価値を見いだす。文化祭への出展は、そうした消費行動を踏まえ、ムービングラバーを実際に使い、自分でスタイリングする楽しさまで体験してもらう施策である。
20年前、ムービングラバーは若者が髪をスタイリングする行為を身近なものにし、「お前、何色?」という会話まで生み出した。その後、国内累計出荷数は2億2984万個を超え、販売地域は世界20以上の国・地域に広がった。しかし、今回目指すのは過去の成功の再現ではない。木村の再起用で、20年にわたり培ってきたブランド資産を生かす一方、高校文化祭では、これからワックスを使い始める世代に自らスタイリングする機会をつくる。長年築いてきた強みを現在の若者の価値観に合わせてアップデートし、次のスタイリング文化を創る。それが発売20周年の全面刷新に込めた思いだ。

















