2030年までに全国100店舗展開を計画

 平時だけでなく、有事の際にも「マチのほっとステーション」となる――。そんなローソンの決意を具現化した店舗が、2月24日、千葉県富津市に誕生した。災害支援コンビニとして運営を開始した「ローソン富津湊店」(冒頭写真)だ。

 災害支援コンビニとは、平時は通常のコンビニとして営業し、災害時には地域住民の支援拠点となる店舗のこと。ローソンは2030年までに全国で100店舗を展開する計画で、あわせて社用車100台を電源供給が可能な車に切り替える方針も打ち出している。

 富津湊店を災害支援コンビニの1号店に選んだ理由は複数ある。南海トラフ巨大地震に備えた「南海トラフ防災対策推進地域」に指定されている富津市に立地していることに加え、店舗は津波の影響を受けにくい場所にあり、広い駐車場を備えているため、車で避難する際にも利用しやすい点を評価した。

 災害支援コンビニ化に向け、富津湊店には太陽光発電設備や業務用蓄電池をはじめ、デジタルサイネージ、バッテリーチャージャー、KDDIのスターリンク用アンテナ、災害時用おにぎり向けの米と水、凝固剤を使った災害用トイレなどを導入。災害時用井戸も設けた。事業サポート本部リスク統括部の石合大悟部長は、「現時点で導入可能なフルスペックの装備を整えた」と話す。

 太陽光発電と蓄電池により停電時でも電力を確保し、店内の照明やレジを稼働させて営業を継続できる体制を整備。デジタルサイネージで災害情報を発信し、スターリンクによって通信環境も確保する。さらに、スマートフォンの充電やトイレの利用といったサービスを提供するほか、併設する厨房で災害時用おにぎりを製造・販売するなどの対応を想定している。

 ちなみに、この災害時用おにぎりは、塩や具材を使わず白飯のみを握ったもの。平時はプラスチック容器に入れて白飯として販売しているが、災害時には容器の調達が困難になる可能性を想定し、おにぎりとして提供する。物資の供給が途絶える中でも、最低限必要な水とごはんを確保することが重要だとの判断からだ。

富津湊店には太陽光発電設備や業務用蓄電池を設置し、停電時でも電力を確保する
災害発生時には、店内厨房で災害時用おにぎりを作って販売する 

災害時にも明かりの消えない店舗を

 今後の多店舗展開に向け、1号店では店舗運営ノウハウの蓄積にも取り組む。石合部長は「災害発生時に誰が店舗にいるかは分からない。誰でも適切に対応できるようマニュアルを整備することが重要」と強調する。また、災害時用おにぎりの材料についても、「平時に米やペットボトルの水などの商品を多めに用意し、日常的に使用しながら備える〝ローリングストック〟の考え方が欠かせない」としており、店舗スタッフの声を反映しながら、平時も含めた運営方法を確立していく。今後は加盟店にも災害支援コンビニが広がることを見据え、年3回の防災訓練などを通じてマニュアルの実効性を検証・改定し、加盟店でも使いやすい内容に仕上げていく方針だ。

 災害支援コンビニは災害時の拠点を目指す一方で、「災害時には、オーナーや従業員自身が被災者になる可能性もある。まずはご自身とご家族・従業員の安全を確保し、その上で営業できる状況であれば店を開けていただく。その際、最低限必要な電力や、おにぎり用の米と水を確保しておくというのが災害支援コンビニ」だと石合部長は説明する。

 なお、富津湊店では津波を想定した支援体制を整えているが、日本海側の店舗では豪雪被害など、地域ごとに発生確率の高い災害を想定した備えも検討していく。さらに、災害支援コンビニで培った汎用性の高い取り組みは一般店舗にも展開する方針で、まずは店内厨房を持つ店舗へ災害時用おにぎりの導入を検討中だ。このほか、防災イベントの開催や、ローリングストック向けの商品を集めた売り場づくりなど、地域住民の防災意識を高める取り組みも視野に入れている。また、多店舗化に向けては、地域課題の解決を掲げる「ハッピー・ローソンタウン構想」にも、災害支援コンビニを組み込んでいくことを計画している。

 ローソンの災害支援の原点は、1995年の阪神・淡路大震災にある。石合部長は、「『コンビニに明かりが灯っているのを見て心強かった』という多くの声が寄せられたことから、災害時にも明かりの消えない店舗がある環境を全国に作ることで、地域社会に貢献していきたい」と力を込めた。