五感で楽しむ体験型カフェで若年層を取り込む
淡い色合いの店内に一歩足を踏み入れると、かぐわしいお茶とハーブの香りにふわりと包まれる。一人でふらっと。友人や家族と一緒にゆったりと。ストレスの多い日々の中でほっと一息ついたり、心と体の調子を整えたり、自分自身と向き合うことができる場所――。それがこの度、山本山が玉川高島屋S.C.南館の1階にオープンしたウェルネスカフェ「YMY GYOKURO TEAROOM(ワイエムワイ 玉露ティールーム)」だ。
330余年の歴史を紡いできた山本山が新たな挑戦に乗り出している。認知度の高い海苔だけでなく、祖業のお茶のブランディングに今ひとたび注力。特に1835年に山本山が開発した「玉露」に着目し、現代のライフスタイルに合った飲み方を提案すべく、新ブランド「YMY」を今年3月に立ち上げた。商品展開と合わせ、4月にはブランド名を冠した旗艦店を出店。急須でお茶を飲む機会が減っている、あるいはそもそも玉露を知らないZ世代・ミレニアル世代も含めた幅広い層に向け、新たなお茶の魅力を提案している。
新店舗はYMYのブランドの世界観を体現した店づくりにこだわった。コンセプトはずばり、「玉露ウェルネス」だ。玉露の可能性を追究し、忙しい日々の合間に心と体を潤すひとときを届けることを提供価値に置いている。40坪弱の空間に約40席を展開。シアーカーテンで区切れる半個室も備える。
店内で一際目を引くのが、エントランスから店内の奥に長く伸びる大理石のカウンターだ。広々としたカウンターを用意しているのは、ここで試飲の提案を行うため。店舗を訪れたお客は、入り口でまず1杯の玉露を味わい、その本来のおいしさを体感できるようになっている。玉露は一般的な煎茶と比べて甘みや旨みが強く、格別の深い香りがある。普段飲むお茶との違いや新たな発見を五感で感じてもらうことが狙いだ。


玉露そのものももちろん楽しめるが、店内でメインに提供するドリンクは玉露とハーブをブレンドした山本山オリジナルの「玉露ハーブティー」だ。玉露に柑橘の爽やかさをプラスし、リフレッシュしたい時にぴったりな「HAJIMARU」をはじめ、紅玉(りんご)の甘酸っぱさとラベンダーの香りが心をほどく「YASURAGU」など、全5種を用意。その日の気分や体調に合わせて選べる。これらも試飲ができ、香りや味わいの好みからも選ぶことができる。このほか、玉露を使ったほうじ茶のハーブティーや季節限定ブレンドもラインアップするほか、イートイン利用者には玉露の濃厚な旨みを凝縮した「ショットサイズの玉露」も提供する。

お茶以外のフードメニューも多彩だ。山本山の自慢の海苔を使った小さなおにぎり(280円~)や、見た目も華やかなプチスイーツ(300円~)を豊富に展開。選べる楽しさの提供に加え、自由自在な組み合わせを一つ一つ選び取る行為そのものによって、お客自身が気持ちを整えたり、「自分なりのひととき」を心ゆくまで楽しんでもらうメニュー設計としている。

山本山の飲食事業を手掛ける中嶋辰宏 執行役員 事業開発本部 リテールマネジメント部長は「『お茶と言えば、こう』といった暗黙の了解やルールに縛られない、自由な使い方・楽しみ方ができるお店にしたかった。店内をナチュラルなカラーに仕上げたのは、若年層の方でも入りやすく、カジュアルに楽しんでいただきたいということに加えて、『お客様自身に色をつけてもらいたい』という思いがあったから」と語る。
「YMY GYOKURO TEAROOM」では、店内でYMYブランドの商品の販売も行っている。前述の玉露ハーブティーのティーバッグのほか、玉露のチョコレートやあめなどの菓子も展開。「体験して、気に入ったから家で楽しむ用に買いたい、誰かに贈りたいといった需要を喚起していく。このお店をYMYブランドに触れるきっかけの場所にしたい」と中嶋執行役員は力を込める。
店舗でイベントを開催ブランド発信の拠点と位置付ける
去る3月27日、山本山はオープン直前の店舗を舞台に、新ブランドのお披露目イベントを開催した。イベントの第1部では、同社の山本奈未社長と、櫻井焙茶研究所の櫻井真也代表が登壇。YMYの立ち上げを機に開発された玉露の新機軸・玉露ハーブティー誕生の経緯について対談した。
山本社長は「山本山らしさとは何か、と考えた時、これはやはり玉露だと思った。玉露をもっと広く知らしめたい、かつ山本山にしかできないおいしい玉露を作りたいという考えのもと、メニュー検討を重ね、今回の形に行き着いた」と明かした。
玉露ハーブティーのブレンドを手掛けた櫻井代表は「玉露は世界的に見ても旨みが非常に強いお茶。なのでまず玉露の味の指標を作ってから、玉露が持っていない部分をハーブで補うという考え方で開発した。玉露らしさを残しながら、香りから自然に入っていける商品を目指した」とこだわりを語った。

イベントの第2部では、女優の高梨臨氏(冒頭写真右)を招き、トークセッションが行われた。山本山の印象について聞かれた高梨氏は「CMで見る海苔のイメージが強かったんですが、お茶の方が歴史が長いと知って驚きました」とコメント。続いて玉露ハーブティーを試飲し、「玉露の出汁のような旨みが感じられつつ、ハーブが入っているから飲みやすい。いいとこ取りだと感じました」と新鮮な味わいに舌鼓を打った。普段から気分転換にお茶を飲むという高梨氏。「玉露ハーブティーは玉露をあまり飲まない方でも親しみやすい。手軽さも魅力。ぜひ日常に取り入れてみたいです」と笑顔で話し、会場を沸かせた。
山本山は今期中(2027年2月期)に、YMYブランドの売り上げを1億円規模にまで成長させる考えだ。公式オンラインショップでの商品展開のほか、今後はスパやウェルネス系ホテルなどへの納入も広げる計画だが、中でも物販と飲食を両輪で展開する玉露ティールームは〝ブランドの発信拠点〟の位置付け。顧客の開拓と定着、両面で要となることが期待されている。
中嶋執行役員は「玉露ティールームはYMYの名前を冠した初めてのお店なので、試行錯誤しながらゼロイチで作った。この後、絶えずブラッシュアップしていけるかが本当の勝負だと思っている」と指摘。「お客様の動向を見ながら、新しいことをどんどん仕掛けていきたい」と意気を示す。
また、将来に向けては、YMYと玉露をコンセプトにしたカフェ業態のさらなる出店も視野に入れる。これまで山本山が展開してきた茶房やお茶漬け専門店などの飲食業態は、いずれも社名の「山本山」を前面に打ち出したものだった。今後は新ブランドを軸に、家の外でお茶を手軽に体験できる場所を広げていきたい考えだ。
YMYの認知拡大とともに、お茶文化のアップデートに挑む山本山。日本の豊かな文化を継承しつつ、市場に新しい風とトレンドを巻き起こそうとしている。


















