「トランプ関税は今の国際情勢から考えて無理がある。たぶん続かない」――。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が2025年8月期の中間期の説明会で、こう断言したのは4月10日のことだった。「米国の高関税が適用されれば下期の利益を2~3%押し下げる」(同)との見通しを明らかにしたものの、世界中がトランプ関税の影響を深刻視していたなかで、柳井会長は当初から通期売上収益3兆4000億円(前期比9.5%増)、営業利益5450億円(同8.8%増)の最高益計画の大勢には影響せず、といわんばかりだった。ほぼ2カ月が経過しようとしている今、その落ち着きぶりが際立っている。

 当時の柳井会長の発言には少なくとも「三つの裏付け」がある。一つはすでに今年の米国向けの秋冬物商品は出荷済みで、トランプ関税の影響を受けないことだ。二つ目はファストリ以外の企業も、繊維は途上国での生産が主体で関税では直ちに競争格差がつかない。ファストリもすでにバングラデシュなど生産を多極化。中国以外での生産・米国輸出でも最低限1律の関税はかかるが、それは他社も同じだからだ。三つ目は渦中の北米事業が完全に軌道に乗っていることだ。「リアル店舗がメディアとなることでネット販売にも好影響を与え、顧客層が順調に拡大している」(ファーストリテイリング岡㟢健・最高財務責任者)

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