2次殺菌不要の焼成ラインで本格焼肉の冷食を開発
双日食料の事業の幅が広がっている。同社は、双日グループの食料関連事業を担う企業で、畜産、農水産、基礎原料の調達・加工を行う事業と、さらにそれらを小売・飲食業に供給するリテール事業を手掛けており、中でも畜産事業は、北米産冷凍牛肉の3割以上を輸入し、牛丼チェーンやコンビニなどに供給するなど、主力事業となっている。
その畜産事業で近年力を入れているのがミートワンプロジェクトだ。双日食料が7割超を出資、残り3割弱を畜肉加工メーカーや物流事業者が出資して設立したミートワンを中心に取り組む畜産加工事業で、双日食料がグループの調達力を生かして仕入れた原料を、出資した加工品メーカーが価格・品質などで競争しながら加工、完成した商品を小売業や外食産業に提供するというもの。2018年の取り組み開始から順調に取引を拡大しており、「業界大手企業にも引けをとらない規模感で対応できる事業に育っている」(双日食料畜産事業担当者)。
ミートワンの事業開始時から取り組むのが市販用冷凍畜肉惣菜のNB商品「肉一番」シリーズで、「真空焼肉シリーズ」、「お肉と野菜のミールキットシリーズ」をそれぞれ3アイテム展開するほか、業務用の味付け肉キットも取り揃え、需要を伸ばしている。加えて23年7月には、ミートワン参加企業のミート・コンパニオン社と取り組む焼成加工事業も開始。ミート・コンパニオンの福島工場に双日食料が新たに焼成ラインを導入し、炭火焼カルビ(冒頭写真)などの調理済み冷凍食品を製造している。
焼成ラインは、炭火焼き・直火焼きの2種類の焼き方に対応しており、様々な商品の加工が可能だ。さらに、工場内部にクリーンルームを設置することで、焼成後すぐに包装できるため、包装後の2次殺菌がいらない。これにより、「解凍した後も肉のぱさぱさ感がなく、焼きたてのおいしさが味わえ、お取引先様からもご好評をいただいている」(双日食料畜産事業担当者)という。また、包装機も、トップシール、個食パック、深絞りなどさまざまな方式に対応しているため、市販用から業務用まで幅広い商品を製造できる。現在、食品スーパーなど小売業の惣菜・弁当用や駅弁用の炭火焼き肉、ハンバーグなどを供給するほか、ローストビーフの製造も検討中だ。
即食簡便需要の高まりで、弁当や惣菜を強化するスーパーは増えているが、一方で人手不足も深刻化しており、製造面での簡便ニーズも高まっている。双日食料では、炭火焼きのおいしさをそのまま再現できる点を訴求することで、そうした小売業や外食の需要を取り込む構えだ。
食品関連企業11社が参画植物肉で新たな需要を創出
ミートワンの事業同様、取引先との共同出資による事業展開は、植物肉の分野でも始めている。23年12月、素財メーカーのADEKAや総合食品加工メーカーの昭和産業、ロイヤルホストなどのインフラの役割を担うロイヤルなど食品関連企業11社とともに、植物由来の代替肉などプラントベースフードの共同開発や商品化を行う新会社、フードテックワンを設立した。
畜産業の地球温暖化への影響や人口増に食料供給が追い付かずタンパク質が不足するというプロテインクライシスの問題などから、双日グループでは代替肉事業の拡大を狙っており、21年には双日食料がテイスタブル社のプラントベースミート「NIKUVEGE(ニクベジ)」の独占販売契約を締結。その後、双日グループがテイスタブルとの資本提携を行い、さらなる市場拡大を目指し営業活動を展開している。
フードテックワンの事業はこれをもう一歩進めたもので、参画企業それぞれが持つ素材や加工技術、流通チャネルなどを活用し、代替肉の開発から製造、流通までを手掛ける方針だ。その一環で、この11月には産学連携のプロジェクト「チャレンジ・ザ・グルメ2024」を実施。11月1日~12月1日の1カ月間、フードテックワン参画企業が開発したプラントベースフード22種類を使い、東京家政大学で栄養学を学ぶ学生と東武100貨店 池袋本店 レストラン街スパイスの各店が新メニューを開発し、43店舗で47メニューを提供した。
訪日客の増加に伴いベジタリアンメニューの充実の観点から、空港・ホテルなどでは代替肉メニューはすでに定番化しつつあるが、一般的な日本人にはまだなじみがないのが現状だ。今回のプロジェクトは、そうした代替肉に馴染みのない層に「使う」(学生・店舗)、「食べる」(顧客)といった体験の機会を提供することで、需要のすそ野を広げる狙いがある。
25年2月開催のSMTS2025も取引先への訴求の場として活用する方針で、双日食料のブースでは、「肉一番」シリーズや福島工場の焼成肉のほか、フードテックワンの取り組みも紹介する予定だ。昨年は、SMTS出展を機に量販店の惣菜売り場向けの商品が伸びたことから、「今回の出展でも新たな需要創出につなげたい」(双日食料畜産事業担当者)と、販路拡大に意欲を示している。
出展ゾーン:生鮮
ブース番号:2-306