近年、英国では「万引き」による被害が増大し深刻な問題となっている。2023年9月までの1年間に万引きと立証された事件の数は40万件を超え、過去20年間で最悪の記録となった。この数値は、前年の約30万件と比較しても大幅に増加している。大手スーパーマーケットの一つであるコープが、昨年後半の半年間で3300万ポンド(約64億円)の万引きによる損失を報告するなど、小売業界全体に大きな影響が出ている。

 小売業界にとって、万引きは昔から恒常的に起きている軽犯罪であり、事態が悪化してもメディアはあまり取り上げてこなかったのだが、今年7月、総選挙後にチャールズ国王が行ったスピーチから状況が変わった。その内容は、10年前に制定された「犯罪と警察治安法」を、万引きや店員への暴行などの社会的に望ましくない行為を厳しく処罰できるように見直すという法案の発表だった。コープの広報役員ポール・ジェラード氏の「この声明は業界に大きな変革をもたらすことになるだろう」という声に代表されるように、小売業界はこのスピーチを驚きとともに歓迎した。

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