イトーヨーカ堂は神戸大学と共同で、AIを活用した空調エネルギー削減システム「AIスマート空調システム」を、2025年度にかけて約70店舗に本格導入する。同システムは、店舗内に設置したカメラや温度計などのセンサーによって、人流、温度、CO2濃度などのデータを収集し、それをAIが解析・学習することで最適な空調管理を行うというもの。これにより、来店客数や室温の変化に応じた効率的な空調運用が可能となる。お客が集中するフロアに冷房や暖房を効率的に稼働させたり、お客が少ない時間帯は空調の稼働を抑制したりすることで、エネルギー消費量を大幅に削減する。

 今年1月からイトーヨーカドー八王子店で行っている実証実験では、空調関係のエネルギーを約40%削減、CO2排出量を136トン削減する効果がみられた(今年1~7月)。この結果を踏まえて、グランツリー武蔵小杉店(神奈川県)を皮切りに、アリオ市原店(千葉県)やアリオ鷲宮店(埼玉県)など約70店舗に順次、AIスマート空調システムを導入する(ヨークは空調システムの関係で導入予定なし)。

 現在、セブン&アイグループは環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」の一環で、30年度までにグループ全体の店舗運営に伴うCO2排出量を50%削減(13年度比)し、50年度には実質ゼロにするという目標を掲げている。今回の取り組みにより、同目標に対して、24年度以降に必要な削減量の約4.2%(約2.2万トン)が見込まれる。

 9月6日に行われた発表会で、イトーヨーカ堂の山本哲也社長(冒頭写真左)は「イトーヨーカ堂のCO2排出量削減活動は省エネ・創エネ・再エネ調達の三つを柱に進めており、直接的なCO2排出量の削減という意味では、その中でも省エネが最も重要な取り組みと考えている。AIスマート空調システムは、まさにその省エネに大きく寄与することができるものだ」と力を込めた。

 また、神戸大学の藤澤正人学長(冒頭写真右)は「神戸大学は産学連携に非常に力を入れており、今回の連携は産学連携の社会実装のモデルケースとして大きな期待を寄せている」と語った。神戸大学のAIスマート空調システムは、すでに地下鉄駅や空港、伊勢丹新宿店や阪急うめだ本店などの商業施設でも実装されている。