経営再建中の米百貨店ニーマン・マーカス・グループを、同業サックス・フィフス・アベニューの親会社であるHBCが26億5000万ドルで買収する。買収後は流通大手のアマゾン・ドット・コムやソフトウエア大手のセールスフォースが出資する新会社を設立し、オムニチャネル戦略を強化する。

  ニーマンは、コロナ禍の店舗一時閉鎖や多額の債務から2020年5月に連邦破産法第11条の適用を申請しており、資本増強が急務だった。

 新会社にはニーマン傘下の二大百貨店で1万人以上の従業員を抱える「ニーマン・マーカス」「バーグドルフ・グッドマン」が含まれる。営業は「サックス・フィフス・アベニュー」「サックス・オフ・フィスフ」「ニーマン・マーカス」「バーグドルフ・グッドマン」の各ブランドごと、それぞれ継続する。 

  新会社のCEOには、現在サックスのeコマース部門でCEOを務めるマーク・メトリック氏が就任する。オンライン機能とフルフィルメントプロセスを進化させ、各ブランドの商品へのアクセスを向上させる戦略だ。テクノロジー主導のアプローチを強化し、ファーストパーティデータ(自社で収集したデータ)とAIを活用することで、顧客ごとに合ったオンラインショッピング体験を創造し、より良いサービスの提供を目指す。

 HBCは米ニューヨークとカナダのトロントに本社を置き、カナダでは高級小売店「ハドソンズ・ベイ」を展開し、サックス・フィフス・アベニューの実店舗を運営するSFA、サックス・オフ・フィフスの店舗運営会社O5も所有している。

 サックス・グローバルは、HBCの米国の不動産資産とニーマン・マーカス・グループの不動産資産も所有し、一流の高級ショッピング街に立地する小売不動産70億ドルのポートフォリオを構築する。

 本取引の完了後、HBC のカナダ事業はサックス・グローバルから切り離された独立事業体として資本増強され、流動性が強化される。HBCは、ザ・ベイ・ドットコムやハドソンズ・ベイの店舗網を運営するハドソンズ・ベイや20億カナダドルの不動産ポートフォリオなど、カナダの小売・不動産資産を所有する。

アマゾン、セールスフォースが出資

 HBCは、アポロの関連会社が管理する投資ファンドおよび口座から11.5億ドルのフルコミット型タームローンを、バンク・オブ・アメリカ(主幹事)、シティグループ、モルガン・スタンレーなどから20億ドルのフルコミット型リボルビング・アセット・ベース・ローン・ファシリティを確保した。

 取引完了後、アマゾン・ドット・コムがサックス・グローバルに投資し、サービスの高度化に協業する。中堅プライベート・エクイティ・ファームであるローヌ・キャピタルおよび関連投資会社も、サックス・グローバルへの出資を継続する。サックス・ドットコムの投資家であるグローバル・ソフトウェア投資家インサイト・パートナーズも新会社の株主となる。さらに、セールスフォースも出資者となる予定だ。

 HBC およびニーマン・マーカス・グループの取締役会が取引を承認しており、今後は規制当局の承認を待つことになる。取引完了まで、両社は別々に事業を継続する。

  ニーマン・マーカスのジェフロイ・ヴァン・レムドンクCEOは、「今回の発表は、差別化されたビジネスモデルによって、お客様に満足いただける関係を築くという、われわれの揺るぎないコミットメントの証である。新しい長期的な資本構造により、われわれの象徴的なブランドであるニーマン・マーカスとバーグドルフ・グッドマンが継続的な成功を収めることができる」と述べている。