UAゼンセンは6月5日、小売・サービス業の従業員を対象に実施した「カスタマーハラスメント対策アンケート調査」の結果を発表した。調査期間は、今年1月18日~3月18日までの2カ月間で、回答した組合数は、大手を中心に210組合、回答件数は3万3133件。

 調査結果によれば、直近2年以内にカスハラ被害にあったと回答した件数は1万5508件。割合は46.8%と、前回実施した2020年より9.9ポイント減少した。UAゼンセン流通部門執行委員の佐藤宏太氏(冒頭)は、「この間の報道などによるカスハラに対する認知の拡大や企業の取り組みの成果」と評価した。

 被害の内容は、前回同様、「暴言」「威嚇・脅迫」「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」などの構成比が高く、この三つで半分以上を占めた。ただ一方で、「長時間拘束(11.1%)」「セクハラ行為(3.7%)」「SNS・インターネット上での誹謗中傷(0.8%)」は前回よりも被害が増加。「新たな課題と見ている」と佐藤氏は話す。

 また、佐藤氏は、カスハラは業態ごとに特徴があると指摘。GMS、スーパーマーケット、ドラッグ関連であれば、カスハラ行為者は60代男性が中心で、対応する従業員は女性という典型的なパターンが多いと分析する。被害のきっかけとなるのは、ポイント制度に関するもの。上司を呼び出し謝罪などを求めるケースが目立つという。また、これらの業態は対応策が最も検討されていない業態の可能性があるとも指摘した

 カスハラ被害後の心身状態の影響については、「寝不足が続いた」「心療内科などに行った」と回答した人が計300人強と、カスハラが健康被害にまで及ぶ危険性を示した。

 企業のカスハラ対策については、「マニュアルの整備(28.6%)」「専門部署の設置(23.4%」)「迷惑行為対策への教育(21.0%)」などの取り組みが前年より若干増加したものの「特に対策がなされてない(42.2%)」の回答が前回より1ポイントしか減少していないことを受け「現場の最前線まで対策が浸透していない」(佐藤氏)と懸念を口にした。

 ガイドラインの作成については、「線引きがむずかしい」とするも、従業員が「ここまでしかできない」と会社のルールを持って毅然に対応できるかが重要と話す。実際の企業のガイドラインでは、時間拘束型のカスハラ対して、「30分以上拘束されたら引き取ってもらう」「30分経過したら上司を呼ぶ」など具体的な内容が記されているものもあり、こういったわかりやすいマニュアルがカスハラ対策に寄与すると話す。

 ローソンが先日、店舗従業員が着用する名札を「イニシャル表記」や「アルファベットによる任意の文字」を可能とすることを発表したが、これについてUAゼンセンは、「フルネームを提示することに恐怖感を感じている人は多い」「他企業にも投げかけていきたい」とコメントした。

ローソンは6月4日より、名札への実名以外での任意のアルファベット表記を可能とした

 今後は、中小企業においてもカスハラ対策を強化する方針を示し、スーパーマーケットにおいては、流通3団体(オール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会)と情報交換をし、共通マニュアルの作成を後押ししていきたいと力を込めた。