肉体派のイベント協賛で健康志向の男性市場を開拓

 7月に累計販売本数1億本を達成したミネラルウォーターの「のむシリカ」。発売元のQvou(キューボー:神戸市)は、市場をさらに拡大すべく、広告宣伝を強化している。

 取り組みの一つが各種イベントへの出展や協賛だ。同社は今年、障害物レースの「スパルタンレース」と総合格闘技イベント「RIZIN(ライジン)」の冠スポンサーを引き受けた。既に5月には、東京ドイツ村(千葉県袖ヶ浦市)で行われた「スパルタンレース」に、7月にはさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)での「ライジン」にそれぞれ出展。イベントステージやリングマットに「のむシリカ」のロゴを表示したほか、出場者や観客に商品を提供。特に「ライジン」では2万2000本の「のむシリカ」を無料配布し、認知向上を図った。

©️RIZINFF

「RIZIN」では、冠スポンサーとして、若い男性層に向け「のむシリカ」をアピール

 競技系のイベントに加え、韓国カルチャーのイベントにも積極的に参加し、若年層への訴求も強めている。5月には韓国カルチャーの一大イベント「KCON JAPAN2023」に、7月には韓国発の音楽フェス「WATERBOMB(ウォーターボム)2023」にそれぞれブースを設置。ウォーターボムでは、無料配布だけでなく、商品販売も実施、東京・名古屋の2会場で合計3万本を売り上げた。Qvouの担当者は、「ブース前に長蛇の列ができるほどの売れ行きだった」と、手応えを語る。

 このほか、8月には「日比谷ビアガーデンフェス」(東京・千代田区)や東京・中野区の恒例イベント「中野駅前大盆踊り大会」にも出展。ミネラルウォーターの需要が高まる夏、この時期ならではのイベントに出展することで幅広い層への訴求力向上を図った。

「日比谷ビアガーデンフェス」(上)や「中野駅前大盆踊り大会」(下)にも出展、老若男女幅広い世代の認知向上を狙った

 Qvouがこうしたイベントへの参加に力を入れる狙いは、利用者層の拡大にある。もともと「のむシリカ」はEC限定でケース販売されていた商品で、中心的な購入者は40~60代の女性だった。そこで昨年、一般の小売店頭での販売開始を機に幅広い層の取り込みを狙い、広告宣伝活動の強化に乗り出したのだ。

 例えば、「スパルタンレース」や「ライジン」は、鍛えた肉体を使い、障害物競争や格闘技に挑むイベントで、来場者は若い男性が中心になる。こうした層は、競技を見ることはもちろん、身体を鍛えることにも関心のある人が多いことから、イベントでの露出を増やすことで、健康志向の若い男性の需要開拓を狙っている。

 韓国カルチャーイベントの参加者の中心は、K-POPや韓流ドラマファンの若い男女だ。韓国といえば美容大国で、K-POPのアイドルも韓流ドラマの俳優も美意識が高く、そのファン層も美容への関心が高いため、イベント出展でこうした若者層を取り込む構え。

 一方、季節イベントでは、老若男女幅広い層の認知拡大を目指した。Qvouの担当者によれば、「日比谷ビアガーデンフェスには、平日は、会社帰りのビジネスパーソン、週末は学生からファミリーまで様々な層が来場した」という。こうした多様な消費者層の間で認知を高めることでも、利用者のすそ野を広げようというのだ。

 イベントへの出展に加え、メディアの活用にも力を入れている。従来のBS・CSのテレビCMに加え、この7月からは地上波の全国ネットでもテレビCMの放映を開始。人気の情報番組などにもCMを出稿し、認知度を高めている。また、全国のタクシーの車内サイネージにも動画広告を掲載したほか、都内のバス停でも大型広告を展開。バス停の脇に設けられた広告面への掲載は、8月末現在で732面に上り、バス利用者の間で「のむシリカ」の知名度を高めている。

バス停の脇に設けられた広告面への掲載は、8月末現在で732面に上る

 実際、広告宣伝の成果も出てきており、「イベントなどで商品を配布する際、最近は、『あっのむシリカだ!』といった声も多数聞かれるようになった」(Qvou担当者)。また、タクシーのサイネージやテレビCMで「のむシリカ」を知り、問い合わせを寄せる小売業も増えているという。

成分・味・飲みやすさで高い評価を得る

 広告宣伝の強化と一般流通での取り扱い開始により、EC限定の〝知る人ぞ知る商品〟から、街中の小売店頭にも並ぶ〝おなじみの商品〟へと存在感を高めつつある「のむシリカ」は、シリカ水と呼ばれるミネラルウォーターだ

「シリカ」とは、ミネラルの一種で、人体のほとんどの組織に含まれ、体内で組織同士をつなぐ役割を担っており、不足すると肌荒れや抜け毛、骨折などにもつながりやすくなる。健康維持には不可欠な成分だが、体内での生成ができないため、食事などで摂取する必要があり、その量は、成人で1日当たり約40mgと言われている。「のむシリカ」には、このシリカが1L当たり97mg含まれているため、500mLサイズを1日1本飲むだけで十分な量のシリカを摂取できるのだ。ちなみに1L当たり97mgという含有量は世界でもトップクラスだという。

 シリカ水の中には、化学合成したシリカを水に添加することで高濃度をうたう商品も少なくないが、「のむシリカ」は、霧島連山の麓、宮崎県小林市の水源の中で数本ある水脈のうち、シリカの含有量が豊富な1本の水脈からだけ採水することで、天然水に含まれるシリカのみで高濃度を実現しているのだ。また、Qvouによれば、シリカは、ナチュラルミネラルウォーターからの摂取が最も吸収率が高くなると言われている。

 さらに、シリカ以外の天然ミネラルの含有量も多く、二日酔いや胃腸の改善に役立つと言われる炭酸水素イオンが1L当たり170mg含まれるほか、カルシウムとマグネシウムは、吸収率が最もよいとされる2対1の黄金比率で含まれている。

「のむシリカ」には各種ミネラルがバランスよく含まれている

 飲みやすさも特長の一つだ。水の飲みやすさは、主に水の硬度によって決まり、カルシウムおよびマグネシウムの含有量が少ない軟水ほど飲みやすく、逆に含有量が多い硬水ほど飲みにくい。様々なミネラルが偏りなくバランスよく含まれる「のむシリカ」は、硬度が中程度の「中硬水」に分類され、ミネラル分をしっかり摂取できるうえ、飲みやすいというメリットがある。

 また、シリカには、料理の味を引き立たせる効果もあり、「のむシリカ」で炊いたご飯は他の水を使った場合より艶が増すうえ、深いコクと甘みが感じられる。更に、お酒の水割りや水出し茶も、「のむシリカ」を使うと、他の水よりもコクと旨味が増し、特にお茶は鮮やかな色になるという実験結果が発表されている。

「のむシリカ」は中硬水のナチュラルミネラルウォーターだ

取り扱い業態もエリアも拡大、200店舗超に導入する小売業も

 こうした特長を持つ「のむシリカ」は、認知の拡大とともに、小売業での取り扱いも増やしている。前述の通り、ECを主戦場としていた「のむシリカ」が一般小売市場に本格的に参入したのは、昨年12月。以来、半年余りで導入した小売業は50社近くまで増え、その内訳も、ローカルの食品スーパー(SM)から大手総合スーパー(GMS)、生活協同組合、高質スーパーやホームセンター、さらには百貨店まで多岐にわたる。

エンドで大々的に訴求する小売店舗も多い

 中でも採水地のある九州では、積極的な小売業が多く、エリアで展開するGMS各社がこぞって取り扱いを強化、専用売り場を設けるところも出てきた。また、関西拠点の食品卸、加藤産業の展示会出展から小売店流通を始めたこともあり、当初は西日本エリアの小売業の扱いが多かったが、三井食品、伊藤忠食品など、東日本拠点の食品卸の展示会にも出展するようになったことなどから、導入する小売業の営業エリアも拡大。最近では、有力なホームセンターが関東エリアの全店に導入したほか、東北の大手SMでの本格展開も決まり、一気に200店舗以上への配荷が予定されている。さらに、新たな小売業からの引き合いも多数寄せられており、500mL入りの汎用品だけでなく、2L入り商品の導入に積極的なところもあるという。

展示会への出展をきっかけに、小売業との取引を拡大している

 暑さがおさまり、ミネラルウォーターの需要が一段落する秋・冬に向けても、「のむシリカ」は、豊富なミネラル・飲みやすさ・おいしさを訴求しながら、新市場を開拓することで、需要の拡大を目指す。

■問い合わせ先卸一覧
 ・国分グループ本社株式会社
 ・加藤産業株式会社
 ・トモシアホールディングス株式会社
 ・三井食品株式会社
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 ・ヤマエ久野株式会社