商社と連携し小売業への導入を促進

 通販市場で8500万本を売ったQvou(キューボー:神戸市)のミネラルウォーター「のむシリカ」が満を持して小売店流通での販売を開始した。昨年、大阪の阪神梅田本店でイベントを開催したほか、総合スーパーや食品スーパー(SM)を展開する大手小売業も販売をスタート。さらに今年に入ってからも大手量販店が定番商品として採用。50を超える店舗で展開するなど、大規模な導入を決めた。このほか、中小のSMやコンビニエンスストアでも取り扱いが始まっており、販売店舗数は急速に拡大している。

 食品卸売業も「のむシリカ」の販売に手応えを感じている。加藤産業では、昨年末時点で「のむシリカ」の納入先は1社だったが、今年1月の商品展示会で商品を紹介したところ、引き合いが殺到。今では毎週のように新規の納入先が増えており、中には、展示会で商品を気に入り、翌週には取り扱いを始めたSMもあるという。

「のむシリカ」の取り扱いを始めるコンビニやスーパー、百貨店などの小売店が増えている(写真は株式会社マルエイの店舗)

 業態を問わず多くの小売業が「のむシリカ」に注目する理由は、EC市場での販売実績にある。これまで「のむシリカ」は、主に通販市場でケース販売されていたが、その価格は、500ミリリットル入りペットボトル1本当たりに換算すると、大手飲料会社のミネラルウォーターの2倍近い。にもかかわらず、販売量は、2017年発売時の7631箱から21年の115万43箱へと、この4年間で150倍に伸長。今では、毎月10万ケース以上、250万本を安定的に出荷するまでになっている。リピート率も極めて高く、業界関係者も注目するほどだ。

 さらにシリカ水の中での競争力も高く、ECのアマゾン内のシリカ水の月間売り上げシェアを比較した調査(22年1月実績)では、「のむシリカ」のシェアは28%超と、2位を10ポイント以上引き離して、売り上げナンバーワンを達成している。

「のむシリカ」は中硬水のナチュラルミネラルウォーターだ

シリカ含有量は世界トップクラス飲みやすさも人気の理由に

 こうした高い人気の理由は、その成分にある。「のむシリカ」は、ミネラル成分をバランスよく含み、特にシリカの含有量が多い点が特長だ。

 シリカは、皮膚や毛髪、骨、関節、歯、爪など人体のほとんどの組織に含まれるミネラルで、体内で組織同士をつなぐ役割を果たしている。これが不足すると肌荒れや抜け毛、骨折などにもつながりやすく、健康維持のためには欠かせない。ただ、シリカは体内で生成することができないため、食事などで摂取する必要があり、その量は、成人で1日当たり約40ミリグラムと言われている。「のむシリカ」には、このシリカが1リットル当たり97ミリグラム含まれているため、水を飲むだけで十分な量のシリカを摂取できるのだ。

 ちなみに、この1リットル当たり97ミリグラムという含有量は世界でもトップクラスで、ここに着目する小売業も多く、50店舗以上での導入を決めた大手量販店でも、シリカの含有量の高さが導入の決め手となったという。

 このほかシリカには、料理の味を引き立たせる効果もある。「のむシリカ」で炊いたご飯は他の水を使った場合より艶が増すうえ、深いコクと甘みが感じられる。さらに、お酒の水割りや水出し茶も、「のむシリカ」を使うと、他の水よりもコクと旨味が増し、特にお茶は鮮やかな色になるという実験結果が発表されている。

 なお、シリカ水の中には、化学合成したシリカを添加して高濃度をうたう商品も少なくないが、「のむシリカ」は、天然水に含まれるシリカのみで高濃度を実現している。QvouのCEOの久保龍太郎氏は、「シリカは、ナチュラルミネラルウォーターからの摂取が最も吸収率が高いと言われています。当社の製品は、霧島連山の麓、宮崎県小林市の水源の複数本ある水脈のうち、1リットル当たり97ミリグラムのシリカを含む1本の水脈からだけ採水することにより、自然由来の高いシリカ含有を実現しています」と強調する。

「のむシリカ」は、霧島連山の麓、宮崎県小林市の水源で採水されたナチュラルミネラルウォーターだ

 さらに、シリカ以外の天然ミネラルも豊富だ。二日酔いや胃腸の改善に役立つと言われる炭酸水素イオンが1リットル当たり170ミリグラム含まれるほか、カルシウムとマグネシウムは、吸収率が最もよいとされる2対1の黄金比率で含まれている。

「のむシリカ」は自然由来のシリカを豊富に含んでいる

 飲みやすさも「のむシリカ」の特長だ。水の飲みやすさは、主に水の硬度によって決まる。カルシウムおよびマグネシウムの含有量が少ない軟水ほど飲みやすく、逆に含有量が多い硬水ほど飲みにくい。様々なミネラルが偏りなくバランスよく含まれる「のむシリカ」は、硬度が中程度の「中硬水」に分類され、ミネラル分をしっかり摂取できるうえ、飲みやすいというメリットがある。

「のむシリカ」は料理に使うと刺激や角がとれることから炊飯などにも最適だ

韓流スターも広告に起用、巧みなメディア戦略で認知拡大

 「のむシリカ」がシリカ水売り上げナンバーワンの地位を確立したのは、高い品質に加え、巧みな販促施策の力もある。Qvouでは、「のむシリカ」だけに年間20億円の広告費を投入しており、久保氏も「大手飲料メーカーでも水一つにこれだけかけているところはないはず」と胸を張る。

 広告の中心はネット広告だが、効果が大きいのがBS・CSのテレビCMだ。「のむシリカ」のメインターゲット層は40代から60代の女性で、この層は、BS・CSの韓国ドラマのファンが多いことから、ここにCMを投下することで効果的に認知度を高めている。この4月からは、日本でも人気の韓国ドラマに出演中の俳優、パク・ソンフンを起用した新たなCMを投入。3月からドラマの新シリーズが始まるのに合わせ、人気の韓流俳優のCMの放映でさらなる利用者の 獲得を狙う。

 新規顧客の開拓と併せ、利用者 の固定化にも力を入れている。そのツールの一つがオリジナルの会報誌「月刊のむシリカ」だ。俳優やスポーツ選手など、美容や健康に対する意識の高い著名人のインタビューをはじめ、食や運動、趣味などの情報を掲載。コンテンツはもちろん、デザインや紙質までこだわることで、月間6万部以上の発行を誇る人気会報誌となっている。

 このほか、利用者層の拡大にも取り組んでいる。新たなターゲットとして開拓を進めているのが、若年層だ。この層はテレビよりも ネットの利用が多いことから、ユーチューブを活用した広告宣伝に注力。チャンネル登録者数が数百万人の人気ユーチューバーらと連携。有力なインフルエンサーに、「のむシリカ」を紹介してもらうことで、テレビCMではアプローチしにくい20~30代の若い世代の取り込みを図っている。

月刊 「のむシリカ」は、6万部以上の発行を誇る会報誌に成長

 高い品質を備えた商品をEC限定で販売するのと並行して、ターゲット層に効果的に伝わるプロモーションを実施。美や健康意識の高い層の間でシリカ水のトップブランドのイメージを確立することで、需要を伸ばしてきた「のむシリカ」。その人気を武器に今度は、小売店流通へと進出。その戦略が奏功し、既に販売を始めた小売業でも、好調な売れ行きを見せている。しかも、健康意識の高い消費者が多い都会のみならず地方の店舗でも顧客の反応はよく、小売業の経営者も驚いているという。値引き販売が一般化する中、値引きせずに販売できる商品は小売業の利益確保にも貢献することから、「のむシリカ」は、価格ではなく価値で売れる商品として多くの小売業が期待を寄せている。

人気YouTuberらと提携し、若い世代向けの情報発信にも取り組んでいる

■問い合わせ先卸一覧
 ・国分グループ本社株式会社
 ・加藤産業株式会社
 ・トモシアホールディングス株式会社
 ・三井食品株式会社
 ・伊藤忠食品株式会社
 ・ヤマエ久野株式会社