経済産業省など3省は3月30日、物流の2024年問題対策を議論する「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の第8回を開き、食品流通団体にヒアリングと意見交換を行った。

 最初に、直近の物流効率化の事例として、首都圏スーパー4社が発足した「首都圏SM物流研究会」について担当者が発表。その後、全国農業協同組合連合会(全農)、全国中央市場青果卸売協会(全中青協)、食品物流未来推進会議、日本加工食品卸協会、日本スーパーマーケット協会の5団体がそれぞれ、「物流の現状」「改善に向けた取り組み」「素案に対する要望」について説明した。

 検討会が作成した打開策の素案には、一定規模以上の発荷主・着荷主・物流事業者に対し、物流改善のための計画策定と報告義務を課す内容が盛り込まれている。取り組みが不十分な場合には勧告・命令といった措置も視野に入れる。

 これに対し、各団体からは「個社への規制によって個別最適に向かうことのないよう留意してほしい」との声が多く上がった。中でも青果流通の団体が強く懸念を表明。全農の小河義徳園芸部次長は、「農産物は収量が一定ではなく、価格も需給に左右されるなど、工業製品などと事情が異なる。計画を策定しても生産・出荷のコントロールは困難であり、事務負担のみが発生する懸念がある」と述べた。また、全中青協の立場で発表した東京青果の中村岩生経営戦略室課長は、「青果流通には個社への目標設定や、勧告・命令を伴う規制措置はなじまないのではないか。プレーヤーごと、テーマごとに全体最適の解決策を検討する体制整備が効果的と考える」と意見した。

 こうした意見を踏まえ、検討会の座長である根本敏則敬愛大学教授は、「全体最適に向けては、エコシステム的な考え方が大切になってくる」と総括。「発荷主・着荷主・物流事業者それぞれが効率化に向けて動くことで、シナジーが生まれてくることも想定している。効率化に取り組まない企業にはペナルティーを課し、対応を促しながら、全体で効率化に向かっていくスキームの構築を考えたい」と述べた。

 そのほか、実務的な観点では、「計画に対する成果・進捗をどう計測するのか」も改めて課題として挙げられた。これに向けては、物流コストの算定、多重下請け構造で見えにくくなっている実運送者の把握などが求められることから、次回以降の物流事業者へのヒアリングの要件に盛り込んでいく構えだ。