SDGsへの関心・意識が高まる中、食品ロス削減の手がかりのひとつとなる「スキンパック」がにわかに注目を浴びている。農林水産省によると、本来食べられるのに捨てられている国内の食品ロスは、年間600万トン以上に上る。

 特に目につくのがスーパーの現場だ。事業系食品ロスが328万トンという数字を表すことからも分かるように、消費期限がわずか1~2日の、ラップで包装された精肉や鮮魚品が、日々消費期限切れで大量に破棄されている。「スーパーにおける廃棄や値下げによるロス率は非常に高い。現在のラップ包装から、スキンパックやMAP(ガス置換包装)に見直すだけで、消費期限延長を実現し利益を改善できます」と食品向けのドイツ製包装機を販売する東京食品機械の秦哲志会長はそう指摘する。

 スキンパックの技術は、加熱した特殊なフィルムを製品に被せ、トレーや台紙との間に隙間なく包装する。製品がフィルムとトレーにぴったり密着した状態を保つので、パック内にドリップが出ることなく、鮮度保持が大幅に向上する。さらに、スキンパックに包まれた肉は熟成化が進み、肉質に旨味まで加味されたという研究結果も出ている。

 またMAPは窒素、酸素、炭酸ガスなど空気中に存在するガスを製品に最適な割合で配合し、消費期限の延長を可能にする。外観はラップ包装とほぼ変わりがないため、消費者に受け入れられやすいという利点もある。内容物や包装現場の環境によっても異なるが、スキンパックでは2週間程度、MAPでは4~7日前後の消費期限を実現する。同社はスキンパックをはじめ、真空パックやMAPといった包装を行う「深絞り包装機」、MAPやスキンパックを行う「トレーシーラー」を主力に販売している。この包装機を導入した某大手スーパーの精肉部門はロス率を約4%以下と半分程度まで削減し、粗利アップを実現した。

 一方で国内の生鮮売り場でラップ包装が重視される理由には、見た目の問題が大きく関係している。日本では精肉の場合、消費者が肉の赤みを鮮度の条件として判断することから、無酸素状態で肉が暗赤色になるスキンパックや真空パックなどが手に取ってもらいづらいという現状がある。実際はスキンパックでも、開封し肉が酸素に触れれば10~20分程度で赤色が再現される。また、真空パックの状態ではラップ包装よりも長期間、安心・安全に製品が提供できる。

 秦会長は「海外では、新鮮な肉の色や食品ロス削減の必要性を消費者もよく理解しています。今では、欧米のスーパーの売り場でラップ包装は見かけなくなりました」と指摘する。

 国内の小売業も食品ロス削減に向け、いち早く取り組みを始めている。コンビニの惣菜・焼き魚・魚介類、一部小型スーパーの精肉は2015年頃からMAP用包装機を全面的に導入。精肉のベンダーでも真空包装を使用する企業が増え始め、長期保存が可能な鶏肉を差別化商材として産直等で展開を広げている。SDGsの目標12(つくる責任つかう責任)にも掲げているように、食品ロス削減は小売業の社会的な使命となっている。消費者の環境意識の高まりに伴い、小売業も変革を求められている。