トラック予約受付サービスの乱立で顕在化した課題を共同解決

――トラック予約受付サービスの導入が急激に増えてきましたが、その理由と活用方法を教えてください。

 春木屋 トラック予約受付システムを提供する企業は十数社ありますが、そのうちの2社がモノフル社とTSUNAGUTEです。幅広く受け入れられた背景には、以前からドライバーの長時間労働が社会問題化されてきたことがあります。ドライバーの荷待ち時間は平均一時間45分にもなります。日本のドライバーが約80万人前後なので、掛け合わせると相当な労働力が消失されていることになります。そこで国土交通省がトラックの荷待ち時間の削減につなげるため、トラック予約受付システムの導入を数年前から推奨してきました。

 トラックの荷受け時間を予約することで荷待ち時間削減や付帯作業を減らし、ドライバー業務に専念できる環境を提供できます。もう一つの大きな利点は、納品先の拠点でトラック台数、車両が集中する時間や曜日のデータを集められることから、それを分析して物流改善に生かせることです。例えば、各期間の範囲でデータを分析することで、納品のリードタイムやどの曜日・時間に納品が集中しているかの気づきにつながり、納品時のボトルネック解消や平準化につなげられるようになります。

 藤岡 確かに、ここ2、3年でこのサービスを提供する企業は急激に増えましたが、それでも物流業界全体で見ると一部しか利用されていません。サービス提供企業がシェアを維持しながら、拡大できる余地はまだ非常に大きいと考えています。そもそも物流業界は他業界に比べてデジタル化が遅れており、サプライチェーンのデジタル化は始まったばかりです。トラック予約だけでなく、庫内ではロボット、RFIDの活用、配車や輸配送、マッチングのサービスなど各社が知恵を出し合って、オペレーション全体での効率化を進めることが急務です。DX(デジタルトランスフォーメーション)という前に、そのデジタルに必要なデータもない状況なので、アナログの情報をまずはデータベース化して蓄積していく必要があります。今でもFAXやホワイトボードを使ったコミュニケーションに終始、そして膨大な紙に頼った集計が行われています。ゆえに、そこを予約受付でバース管理を見える化できるのは大きな一歩となります。

 ――両社は競合でもありますが、トラック予約受付サービスの認知をさらに高め、全体の導入拡大を増やすということですね。

 春木屋 そうです。一方で最近2年の間に企業が相次いで立ち上がり、トラック予約受付サービスが乱立していることも事実です。導入企業は全体から見ると一部かもしれませんが、それでも業界では1000カ所以上の納品先に普及していると思われます。ドライバーの待機時間は減りましたが、サービスの乱立化によって各拠点で予約システムが異なることから、別の負荷が発生しました。例えば、運送会社やドライバーは異なる予約システムを毎回立ち上げ、荷物を運ぶ前日や前々日の夕方の短い時間に急いで予約しなければならないという話をよく聞きます。納品先のメリットは大きい。ですが、肝心の運送会社にしわ寄せがきている。初めての納品先でどの予約システムを使うのか混乱するケースも多い。ここはモノフル社とも知恵を出し合って、解決していきたいと考えています。

 藤岡 おっしゃる通りで、複数のサービスが共存するのは悪いことではありません。国交省や物流企業、運送企業が推奨したこともあってトラック予約の導入がここ数年で一気に広がり、物流現場は確実に便利になりました。ただし、それによって課題も浮き彫りになってきたということも重要です。トラック予約受付サービスをさらに広げるためにも、顧客満足度やサービスレベルを上げることが私達には期待されているのです。その中で、TSUNAGUTE社から課題解決のお話があって、大変有り難いですね。もっと広い視野を持って協力して、サプライチェーンの効率化を図りたいです。

TSUNAGUTE 春木屋悠人 代表取締役社長

オープンなサービス提携で働きやすい環境作りを進める

 ――物流不動産大手の日本GLPのグループ会社であるモノフル、日本最大手の日本パレットレンタルのグループ会社であるTSUNAGUTEという両社の成り立ちは非常に似ていますね。

 藤岡 それぞれ物流不動産とパレットという物流業界に不可欠な大きな母体があって、そこのデジタルに特化した企業として立ち上がったので出自は似ていると思います。

 春木屋 ですよね。システム単体を売ることだけが目的ではなく、それはあくまで手段であって物流業界を効率化することを見据えて両社は企業を立ち上げました。

 ――物流業界ではドライバーの時間外労働の上限や割増金が20244月に適用されます。

 春木屋 物流業界は慢性的な人手不足です。賃金アップや不規則な働き方の是正も必要ですが、それだけでなくデジタル化によって、物流業界で働きたいという若い人を増やさないと業界が成り立ちません。

 藤岡 そうですね。若いドライバーの方は、デジタルネイティブでアプリなどへの順応性が高い。トラック予約にしても外からでは動かせないので、まずは実際に物流に携わっている方々が声を挙げないと変わらないと思います。SDGsの観点からも二酸化炭素を排出するので物流業界には世間の目も厳しくなります。トラック予約受付サービスを広げるだけでもアイドリングストップなどでCO2の削減につながります。

 ――物流業界全体の課題と、その対応についてはいかがでしょうか。

 藤岡 当社はトラック予約も一つのデジタル化のきっかけで、それだけではサプライチェーンの効率化に限界があると考えています。そのため、オープンに、各分野で突出しているサービスを持つ企業と一緒に事業を推進していきたいです。実際に、配車や輸配送、輸送マッチング、人材派遣などの各サービスの分野で何社かと事業提携の実績があります。また日本GLPは物流施設に保育所などを設け、働きやすい環境作りで雇用を促進しています。TSUNAGUTE社などとも一緒に、物流関係者が働きやすくなるよう、サプライチェーンの効率化を図り、物流業界の魅力度を高めたいです。その結果、運送会社が運んだ分だけしっかり賃金も受け取れるように、物流業界の発展に貢献できればと考えています。

 春木屋 日本パレットレンタルはパレットという物流機器の普及によって物流の重労働を解放したいという想いから始まっています。当社も同じDNAを持ち、物流関係者が働きやすい環境作りを目指してきました。特に物流施設や運送会社の現場は、納品書から勤怠表、伝票、配車表など紙の書類で溢れています。この紙をなくすことを企業ミッションにしております。伝票や納品情報をデジタル化して共有化することで、事務所の方やドライバーの働き方も変わり、作業効率も飛躍的に高まります。将来的に物流施設でロボット化が進んだ時に、デジタル化していればスムーズにロボット化にも対応できる。物流全体のデジタル化に向けてはモノフル社など各社がある程度はオープンとなって、一つのサービスだけを取り合うのではなく、協調領域の分野では提供価値を一緒に高めることが市場拡大につながるのではないかと考えています。

モノフル 藤岡洋介 代表取締役社長