ドラッグストアで生鮮品の取り扱い品目が増加している。多くの消費者が買い物回数を減らし、とくに郊外や地方ではまとめ買いのワンストップショッピングによる効率的な消費行動が顕著になった。ドラッグストアで日用雑貨を買って、ついで買いとして精肉、魚介類、青果などを買い求めるというニーズが高まった結果、多くのドラッグストアが生鮮品の取り扱い品目と売り場面積を広げる方針を打ち出し、スーパーと遜色ない販売力を誇る店舗も少なくない。
新たな消費行動の中で、利便性だけでなく食品ロスの削減にも一役買っているのが包装形態だ。食品ロス削減がSDGsの観点から叫ばれる中、農林水産省によると本来食べられるのに捨てられている国内の食品ロスは、年間600万t以上に上るという。店舗では消費期限がわずか1、2日のラップ包装された精肉や魚介類の食品廃棄も多い。「店舗における廃棄ロスや値下げによるロス率は非常に高い。現在のラップ包装から、スキンパックやMAP(ガス置換包装)に見直すだけでシェルフライフ(日持ち期間)の延長を実現し、利益改善につながります」と食品向け包装機を販売する東京食品機械の秦哲志会長は指摘する。
パック内の空気を完全に除去するスキンパックで2週間前後、内容物に合わせ、パック内の空気を窒素、酸素、炭酸ガスなど異なる比率のガスに置き換えるMAPで4~7日前後のシェルフライフを実現する。東京食品機械はスキンパックをはじめ、真空パックやMAPといった包装を行う「深絞り包装機」、「トレーシーラー」を主力に販売している。実際、これらの包装機を導入した某大手スーパーの精肉部門は廃棄ロス率を4%以下まで削減し、粗利益アップにつなげている。
一部国内の小売業も食品ロス削減に向け、いち早く取り組みを開始。コンビニは惣菜、焼き魚、魚介類で、小型スーパーの一部精肉売り場では2015年頃からMAPを導入している。また某大手スーパーの精肉売り場でもスキンパックの実証実験を数十店舗規模で開始。精肉のベンダーでは真空パックを採用する企業が増え始め、長期保存が可能な鶏肉の産直販売で販路を広げている。スーパーやコンビニにおける取り組みの変革を見ていくと、今後、このような消費期限を延長する包装形態が、ドラッグストアでの生鮮品の売り上げの拡大に貢献できると期待される。SDGsに掲げられている目標のひとつ「つくる責任つかう責任」からも分かるように、食品ロス削減は小売業の社会的な使命となっている。消費者の環境意識の高まりに伴い、小売業も変革の時代に入った。