ドライバーの時間外労働制限と割増率50%が24年に適用

 中小運送業者を中心に物流を取り巻く環境が厳しさを増している。2019年に施行された「働き方改革関連法」が運送業やトラックドライバーを含む車両運転業務に関して24年まで猶予されていたが、自動車運転業務全般に適用される時期が近づいているのだ。これが物流業界では「2024年問題」と呼ばれて解決は喫緊の課題となっている。今後、二つのポイントで物流業界に大きな影響を与えることが予想される。

 一つ目は、24年4月から実施されるトラックドライバーの時間外労働時間の上限を年間960時間(月80時間)への義務化。二つ目は、23年4月から運送会社の9割以上を占める中小企業を対象に、月60時間超の時間外労働には賃金率が50%割り増しされ、トラックドライバーに対しても適用される。

 そのため、高齢化が加速しているドライバーの人手不足が進み、さらに、長時間労働が常態化しているドライバーや物流センター担当者の賃金高騰で中小運送業者のコスト上昇は避けられない状況となる。また大手の下請け間での値下げ競争で業績も厳しいことから、跡継ぎがいない中小運送業者はこれを機に廃業に追い込まれると予想される。まだ2年ほどの猶予はあるが、一朝一夕で物流環境を変えていくことは難しい。今から改善に向けた取り組みを始める必要がある。中小運送業者は、荷主とその顧客である納品先の意向に左右されることから、サプライチェーンに関わる企業全体で取り組みを進めなければならない時期にきているのだ。

トラック予約受付システム導入と付帯作業削減が待機時間を減らす

 こうした喫緊の課題に対し、TSUNAGUTEではサプライチェーン全体での物流改善を促すためトラック予約受付システム「telesa-reserve」を提供している。今回はこのシステムの取引先から集めた調査データ「2021年 拠点ごとの月別平均納品車両台数の波動」から物流改善の解決策を分析してみる(表①)。

 1、2月は物流が比較的緩やかで、3月は期末の売り上げ確保のため車両台数が増加。4月はゴールデンウィーク(GW)に向けた在庫確保で納品が多かった。一方で、GWの前に在庫が積みあがった5月は荷動きが緩やかで在庫が捌ききれなかった。今年は東京五輪が開催されたがGW前と差がないことから、特需消費はほぼなかったと推測できる。これから年末にかけて車両台数は例年通り徐々に増えていくと予想される。

 今年の最も平均車両台数が多い4月を例に挙げると、業界平均である待機時間が1時間45分発生すると仮定した場合、トラック予約受付システムを入れないと1拠点当たり月間約932時間の労働時間が失われていたことが分かる。これを単純合算して比べると大型トラックドライバーの年間労働時間が平均2604時間で月換算217時間なので、待機時間の合計は大型トラックドライバー4人分と同じ労働力が失われているともいえる(表②)。このような状況を改善する手段の一つがトラック予約受付システムである。TSUNAGUTEのシステムにおいて、事前に来場予約を行っている場合、待機時間は45分と業界平均と比較し、1時間の作業時間の改善につながる。

 ただし、本来であれば待機時間なしが理想であることから、待機時間が45分発生する理由も調べてみた。トラック予約受付システム導入後にトラックがバースに接車、荷下ろし、退場するまでの平均作業時間をバラ積みとパレット積みの荷姿で比較した(表③)。その結果、荷下ろし時間はパレット積みで短縮できるが、荷姿別(バラ積み、パレット積み)による作業時間にそれほどの差がなかった。その要因として作業時間には荷下ろしのほか、検品、伝票処理などの付帯業務にかかる時間が多かった。実際、当社が納品先にヒアリングを行う中では、「納品は受け手側でいつ、だれが、何を納品するかコントロールできないため、事前準備ができない」、「受注情報と伝票の照合や賞味期限の入力に手間がかかっている」とのコメントもあった。納品先の付帯作業の時間が想定以上にかかっていることが要因で、次のドライバーを案内するまでに時間がかかっているのだ。

 これらのデータからドライバーの働き方を改善し、「2024年問題」を解決に導くためには、①トラック予約受付システムの導入、②荷主とその顧客である納品先での付帯作業を減らし、ドライバーの滞在時間を極力減らす。この2点が効果的であることがわかる。物流の現場ではデータで語られることが少なく、定性的な議論に終始してしまうことが往々にしてある。このような状況を変え、データ分析の気づきから建設的な議論につなげる必要がある。その際には、簡単に実験導入ができる当社システムを1度試し、そこから得られたデータで物流改善の気づきにつなげる一助になれば幸いである。

トラック予約受付システム「telesa-reserve」 問い合わせ先