失速する市場の中で次世代組が売り上げを伸ばす

「これで100mg摂取できるのはお得」、「おなかの中から美しくなれそうなヨーグルト」。インスタグラムのコメント欄で、そんな好評価を集めているのが、カネカが今年1月に発売した「わたしのチカラ™Q10ヨーグルト」だ。現在、スーパーやコンビニを中心に約2000店舗で販売されており、競争の激しいヨーグルト市場において着実に売り上げを伸ばしている。

 その特徴は一言で言えば「乳酸菌+α」の機能価値だ。従来、ヨーグルト市場では大手各社の乳酸菌機能競争が行われてきたが、同商品は乳酸菌のみならず、そこに新たな素材を付加した、言わば次世代型だ。

 コロナ禍により市場トレンドは激変している。昨年上期はコロナの感染拡大による健康ニーズの高まりから盛り上がりを見せたものの、下期に入ると急に失速。例年であれば風邪の流行に伴ってヨーグルトのニーズも高まるが、昨年は風邪の流行が抑制されたことからニーズが低下。結果、大手各社の従来の定番商品は軒並み苦戦の状況にある。

 そうした中でも伸びているのが、カネカを含む「乳酸菌+α」の次世代組だ。カネカFoods & Agris Solutions Vehicle 乳製品事業開発 Strategic Unit 販促企画チームの天川隼人チームリーダーは、「消費者の買い物行動が変化しており、より機能価値の高い商品に注目が集まっています」と指摘する。

 カネカの差別化の武器である「+α」の素材が、還元型コエンザイムQ10だ。抗酸化力が強く、体内のエネルギー産生を助ける物質だ。サプリメントや化粧品などによく使われており、特に40代、50代の女性の認知が高い。

 そのコエンザイムQ10を、より体内で吸収されやすい「還元型」での量産化に初めて成功したのがカネカだ。世界でも同社だけが持つ技術で、世界中にサプリメントの素材として供給する一方、自社でもサプリメントを製造、販売している。「普段の食事では摂取しにくいコエンザイムQ10を100ミリグラム配合しました。サプリメントには抵抗を感じるお客様でも、ヨーグルトならトライアルしやすいのではないかと考えました」と天川氏は開発の背景を明かす。

 もちろん、ヨーグルトとしての機能価値も高い。腸内活動をより活発化させるべく、ビフィズス菌と3種の乳酸菌の複数の菌を配合。日々食べやすいよう、砂糖ゼロ、脂肪ゼロでほんのり甘さを感じる味に仕上げた。

 パッケージにはメインターゲットである30~50代の女性層向けに、淡いピンクのカラーに運動する女性の姿をあしらっている。テレビCMには知花くららを起用。フラメンコ姿が女性の健康的な美しさに訴えかける内容となっている。

インナーケアに関心を持つ女性層から高い支持

 「想像以上の反応」と天川氏が驚いたのが、インナーケアに関心のある女性からの高い支持だ。天川氏は「ヨーグルトになったことでコエンザイムQ10を毎日摂取しやすくなったといったお声が寄せられています」と破顔する。

 そこで今後はCMを定期的に投入しマスの認知を高めつつ、美容に関心の高い女性に対しては女性雑誌とのコラボレーション企画で、コミュニケーションを強化していく。「合わせて秋口に向けて、取扱店舗数も増やしていきたい」と天川氏は力を込める。

 今後の商品展開については、「わたしのチカラ」シリーズで、コエンザイムQ10関連商品のほか、カネカが持つ機能素材を配合させた新たな乳製品の投入を検討している。また「わたしのチカラ」シリーズと並ぶもう一つの柱として、ベルギーの乳業メーカーとの技術提携による「ピュアナチュール」シリーズがある。こちらはすでに、ヨーグルトと牛乳「パン好きの牛乳」などを発売しているが、23年には自社の有機生乳を使用した有機乳製品を発売する予定。この2本柱で乳製品事業24年100億円の目標達成に向け、カネカは今後も価値に重きをおいた商品を市場に投入していく。

手前左から「わたしのチカラTM Q10ヨーグルト」、「ベルギーヨーグルト ピュアナチュール」シリーズ、奥が「パン好きの牛乳」シリーズ

(トップ画面はわたしのチカラTMQ10ヨーグルト)