独自の3層太ストレート製法による商品開発で差別化を図る

 日清食品の和風カップ麺「日清のどん兵衛」シリーズが今年8月で発売45周年を迎える。最近6年間で人気がさらに高まり売り上げは伸長、過去最高を更新した。和風カップ麺で売り上げシェアナンバーワンの不動の人気ブランドに育っている。

 その「どん兵衛」シリーズが誕生するきっかけとなったのは、1976年4月、同社がマーケティング部を設立したことにある。消費者ニーズと社会的要請に応えることを目的に設立されたマーケティング部で、安藤宏基初代部長(現日清食品ホールディングス代表取締役社長・CEO)が最初に手がけたのが新しいカップ麺の容器開発だ。当時、「カップヌードル」などに使用されている縦型容器や角型容器はあったが、丸いドンブリ型容器はなかった。そこでドンブリ型容器を開発し、そばやうどんはドンブリ型、焼そばは皿型とタイプごとに容器を使い分ける現在のスタイルを確立。同年5月に皿型容器を採用した焼そば「日清焼そばU.F.O.」シリーズ、8月にはドンブリ型容器を採用した「どん兵衛」シリーズが発売され大ヒット。どちらもロングセラー商品となっている。

上段左から「どん兵衛」〈きつねうどん、天ぷらそば〉、下段同〈鴨だしそば、肉うどん、かき揚げ天ぷらうどん、カレーうどん〉

 日清食品の技術力はどん兵衛の麺にも表れている。2010年にはうどんに「3層太ストレート製法」の麺を採用し、つゆがよく絡むつるみのある表面と、ねばりのあるコシを中芯に持つ、2mmを超える厚さの麺に進化。他社が縮れ麺を使用しているのとは対照的に、太くてコシのあるストレート麺を実現している。

 こうした技術力を生かし、次々と商品を投入している。昨年11月、「限定プレミアムきつねうどん 史上最もっちもち麺」を発売。使用する小麦のうち30%に「もち小麦」を配合し、かつてないもちもちとした食感と太さを実現。昆布とかつおが上品に調和したつゆは、太い麺に負けないよう、だしのうま味が後を引くしっかりとした味わいに仕上げた。今年2月には「天ぷらそば いつもより長−い長寿祈願そば」も発売。長寿を祈願してそばを食べる風習に従い、長さ約1メートル(製造時)というどん兵衛史上最長のそばが特徴で、豊かな風味とすすり心地の良さを楽しめる。両商品ともに、テレビCMと売り場の販促を連動させた結果、売り上げが大きく伸長している。

「日清焼そばU.F.O.」と異例のコラボ商品で45周年を盛り上げる

 どん兵衛の高い人気はマーケティング力を生かした商品開発にも支えられている。その1つが東日本と西日本でつゆの味を変えていることだ。どん兵衛の定番商品である「きつねうどん」と「天ぷらそば」は発売当初から関ヶ原を境に、東日本は醬油のうま味と香りに鰹だしのうま味と風味をきかせたつゆを、西日本は鰹と昆布のだしを上品に調和させた、すっきりとしながらも味わい深いつゆにするなど、地域の嗜好に合わせて味を分けている。

 またテレビCMも積極的に放映してきた。発売当時、俳優の山城新伍と川谷拓三を起用したテレビCMを放映したことを皮切りに、時代に合わせて若年層の支持が厚いタレントを起用して訴求。現在放映中の俳優の星野源と女優の吉岡里帆を起用した「どんぎつね」は、5年目を迎える好評のシリーズとなっている。

どん兵衛のテレビCM「売上No.1篇」

 こうした取り組みにより時代が変化しても若年層の高い認知度を維持し、売り上げの伸長につながっている。マーケティング部第2グループの木所敬雄ブランドマネージャー(BM)は、「45年もの長い間、多くのお客様に支持されてきたことをしっかりアピールしたい」と力を込める。

 日清食品は今回、同じ45周年を迎えるU.F.O.と初めて年間を通したコラボキャンペーンを展開する。「きつねうどん」「天ぷら」「鴨だしそば」「肉うどん」「かき揚げ天ぷらうどん」「カレーうどん」など定番メニューに加えて、「入れ替えて作ったらうまかった件」と題し、「日清の汁なしどん兵衛 濃い濃い濃厚ソース焼うどん」と「日清焼そばU.F.O.だし醤油きつね焼そば」の特別コラボ商品を5月に発売した。前者はもっちりとした麺にU.F.O.の〝濃い濃い濃厚ソース〟が絡む、濃厚でやみつきになる味わいの焼うどん。青のりと紅しょうがに七味を合わせた 〝U.F.O.ふりかけ〟 を加えて仕上げれば、ピリリと辛味のある和の味わいを楽しめる。後者はU.F.O.ならではのコシのある中太ストレート麺に、どん兵衛らしいかつおだしの風味をきかせた、だし醤油つゆが絡む焼そば。かつおだしの風味と七味が香る 〝どん兵衛マヨ〟を加えて仕上げれば、和風でありながらコク深い濃い味わいを楽しめる。

左から「入れ替えて作ったらうまかった件」<日清の汁なしどん兵衛 濃い濃い濃厚ソース焼うどん、日清焼そば U.F.O.だし醬油きつね焼そば>

 木所BMは、「競争関係にあるU.F.O・チームと異例のコラボで、今までにないことをやっていきたい。下期にかけても驚くような仕掛けを仕込んでいる。45周年を機会にどん兵衛とU.F.O.をいっしょに盛り上げていきたい」と意欲を示す。日清食品は、和風カップ麺で売り上げナンバーワンの地位をより強固にするべく、技術力とマーケティング力にさらなる磨きをかけていく。