再エネ電力導入などでCO2を30%削減
地球規模で環境問題が顕在化していく中で、持続可能な社会への積極的な取り組みが企業に求められている。こうした状況下で、日清食品ホールディングス(HD)は、同社初の環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」を6月に発表した。「地球のために、未来のために。」をテーマに具体的な数値目標を掲げて、2030年に向けた全社的な取り組みを推進していく。内容は地球資源を取り巻く環境の保護および資源の有効活用を進める「資源有効活用へのチャレンジ (EARTH MATERIAL CHALLENGE)」と、日清食品グループの事業活動全般におけるCO2排出量削減に挑戦する「気候変動問題へのチャレンジ(GREEN FOOD CHALLENGE)」の2つが柱だ。「資源有効活用へのチャレンジ」では、「地球にやさしい調達」、「地球資源の節約」、「ごみの無い地球」の3つを取り組む。「気候変動問題へのチャレンジ」では、「グリーンな電力で作る」、「グリーンな食材で作る」、「グリーンな包材で届ける」の3つをテーマに据えた。これらの活動を通じて、持続可能な社会の実現と企業価値の向上へ挑戦する。
特に気候変動問題では、温暖化が進む中で緊急対策が必要となるCO2排出量削減に注力する。「グリーンな電力で作る」をテーマに、省エネルギー活動の推進や太陽光パネル設置、再生可能エネルギー電力購入による使用比率向上などに取り組む。再エネ電力では、ごみの焼却に伴うエネルギーを利用した「ごみ発電電力」を購入する循環型の仕組みを導入。このような活動により、グループ全体の温室効果ガス排出量を30年度までに18年度比で30%削減を目標に据え、18年に41万6000tだったCO2排出量を29万tまで減らす。この目標値は、パリ協定に沿った世界の平均気温の上昇を抑える科学的な根拠に基づいたものとして「Science Based Targets (SBT) イニシアチブ」に今年4月に認定されている。
同時に商品の食材の観点からも環境負荷の低い植物由来原料の研究開発を積極的に進める。すでに「カップヌードル」では、ファンの間で「謎肉」と呼ばれている大豆ベースのネオナチュラルフードを具材に使用。今後はCO2排出量が牛肉や豚肉などに比べ圧倒的に低く、肉本来の食感を持った培養肉の実現化も目指す。CSR推進室の花本和弦室長は、「30年に向けたミッションとして、CO2排出量30%削減を実現可能な目標として一歩一歩着実に進めていきます」と力を込めた。
流通各社と協力し廃棄物総量50%を削減
資源有効活用でも30年に向けた具体的な数値目標を掲げた。①持続可能なパーム油調達率100%、②水資源の使用基準100万円(IFRSベース売上高)当たり12.3㎥へ、③日本国内における製造過程の廃棄物再資源率99.5%、販売・流通過程での廃棄物総量50%削減(15度年比)の3つに取り組む。その中でも水資源の節約では、通常の食品メーカーは100万円当たり20㎥ほど製造工程に使う水使用量を、日清食品HDでは同12.3㎥を目指している。世界的に水資源が枯渇している中で、設備清掃用などの再利用を通して目標値を実現していく構えだ。
また廃棄物総量への対策では、日清食品グループだけでは実現が難しいことから流通全体での協力体制も進めている。例えば、イオンが主体となった食品廃棄物半減プロジェクト「10×20×30」に参画し、業界内での連携強化も図る。製造時に発生する廃棄物のリサイクル率は99.5%を達成していることから、この比率を維持していく体制も整える。
持続可能なパーム油への対応は、グループ全体における「RSPO (持続可能なパーム油のための円卓会議)認証パーム油」の調達比率は現在約20%だが、これを30年度には、RSPO認証パーム油の調達に加え、独自アセスメントにより、持続可能なパーム油の調達比率100%を目指す。
これらの目標実現に向けて日清食品HDでは、今年4月に「環境」「人権」「広報・教育」「海外」「ESG課題分析」の5つのワーキンググループからなるサステナビリティ委員会を設立し、委員長には日清食品HDの安藤宏基社長・CEOが就任した。環境についての意識や知識を各事業会社と、その現場担当者にまで落とし込み、グループ全体で進捗状況を確認し積極的に行動していく。6月9日の発表会見で安藤CEOは、「社員の環境への意識や知識を高め、社内の環境整備を徹底し、持続可能な社会、持続可能な企業を全社一丸となって目指します」と意気込みを語った。