価格と質の二極化に対応し夕夜間の家ナカ消費を取り込む

 緊急事態宣言発出により、酒類の新たなトレンドを作ってきた居酒屋文化は危機にある。その受け皿となるため、家庭用酒類の提案が活発化。ローソンでは高質品と低価格の両方でチューハイやビール類、ワインを幅広く取り揃えて提案している。今年は酒類を軸にした食品全体の棚割りの変更から商品開発の強化で、夕夜間の日販を引き上げる戦略だ。

 酒類市場は飲食店の時短営業や飲み会の減少などで、市場全体は縮小傾向にあります。当社の売り上げが大きかったオフィス・駅前立地の朝昼時間帯もコロナ禍で客数減に直面しています。その一方でお客様の家ナカ時間は増えていることから、当社では「家ナカ時間」の充実をキーワードに品揃えを強化。今年は夕夜間を軸にした食品で日販を引き上げます。

 夕夜間の集客の柱となるのは酒類の強化戦略。酒類を核に好調な冷凍食品、惣菜、加工肉、塩干物、珍味、菓子、フライドフーズと酒に関連する食品全体を、おつまみに最適な容器やフレーバーに変更していきます。手頃な価格帯の加工肉や塩干物の開発、おつまみとして食べやすい容器にした包材の開発を推進。より酒類との買い合わせを促す棚割り変更も今春から本格化していきます。

 当社の酒類はコロナによる客数減の中でも、それに対応する施策を打つことで堅調に推移してきました。2020年上期は、緊急事態宣言発出で急激に酒類が伸長しました。が、昨年夏頃からこの伸びは鈍化し、まとめ買いによる価格志向が強まっている。またアルコール供給制限により、缶チューハイを中心に新商品も昨年秋は少なかった。10月の酒税法改正後には、税率の上がった第三のビールから、税率を据え置いた缶チューハイに市場は購入がシフトしてきています。

 このビール類の低価格志向に対しては、第三のビールのPB「ゴールドマスター」シリーズ(キリンビール)で対応。国内醸造に切り替えより美味しくし、昨年にパッケージもリニューアル。116円の値頃な価格帯で、酒税法改正後も支持を獲得。第三のビール全体でも前期比を上回っています。

 一方で家ナカ生活を豊かにする高品質商品のニーズも高まっています。そこには、昨年リニューアルした留め型「僕ビール君ビール」(ヤッホーブルーイング)を中心に据えたクラフトビールで対応。こちらはアルコール度数を5%から4.5%に引き下げ、女性や若年層を新たに取り込むことができました。

 新商品では、昨年秋に発売した日本初の糖質ゼロビール「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を中心に健康機能性ビールの品揃えも強化。コロナ禍でより鮮明となった低価格と高品質の二極化に対応していきます。

 次に缶チューハイは、酒類のリーチイン3本のうち2本と最も広い売り場面積をとっています。中でも他社に先駆けて着目したのがレモンフレーバーで、今年は棚4段まで売り場面積を広げて集中展開を実施しています。そこに音楽グループのEXILEが監修した留め型「レモンサワースクワッド」(350ml)(宝酒造)を昨年1月に追加。発売3カ月で215万本売れるなど缶チューハイ全体を底上げする売り上げで、2桁増につながりました。今年はその反動で微増ですが、引き続き前期比を上回っています。

 低価格志向に対しては、100円強の留め型「糖類ゼロチューハイ」(サンガリア)シリーズで対応。レモンやストロングドライを中心にフレーバーの幅やニーズの高い500mlの容量サイズを強化。まとめ買いの多い他業態とも戦える値頃な価格と質に設計して売り上げも伸びていることから、留め型に一層力を入れていきます。

 同様に常温でもレモンサワーの素が直近1年で市場が数倍まで伸びていることから、品揃えの強化を図っています。チューハイとハイボールの市場は家庭用が居酒屋代替の役割を担い大きく伸長。今春からはアルコール供給制限が緩和され、新商品が相次いで販売予定です。ただ、今年秋にはその伸びも鈍化していくと見込まれることから、新提案で市場創出も図っていきます。

 常温棚では最も力を入れているのが食卓を豊かにするワインです。ゴンドラ1本にワインを集め、棚の上段には1000円以上のお勧めの高質ワインを集積。ローソングループの成城石井さんと共同開発したワイン4品のほか、エノテカやヴィノスやまざきさんの有名輸入代理店が選定した世界各国の美味しいワインを揃えています。これらワインのお勧め料理のほか、甘辛度、渋み、味などをPOPに入れ、お客様が選ぶ楽しさの演出にも工夫を凝らしています。

 手頃な中価格帯のワインでは、チリ産のフルボトルで548円のPB「カーサ・スベルカソー」(メルシャン)や「アルパカ」(アサヒビール)の多彩なブドウ味種を揃えました。これら日常使いができる品揃えを棚中段で揃えるとともに、リーチインにはスパークリングワインや白ワインも幅広く提案。ワインも二極化に対応できる品揃えに努めています。

ワインでは成城石井と開発した高品質と低価格のPBをバランスよく1本の棚に揃えた

 同じく常温棚の和酒は割安価格の甲類焼酎や大容量2lの普通酒が伸びています。足元では緊急事態宣言発出によって、飲食店でニーズの高い純米酒「八海山」(八海山酒造)や焼酎の「黒霧島」(霧島酒造)の売り上げの伸びも良い。ですが、全体では売り上げの大きかった仕事帰りに購入されることが多い小容量の紙パックや焼酎、ワンカップが苦戦。そこで大中容量サイズの品揃えに変えていきます。

 これらの酒類を当社の集客の強みである販促を年数回仕掛けています。例えば11月に実施した「レモンサワースクワッド」を対象にしたキャンペーン企画では前週比136%と酒類が大きく伸長しました。今年も酒類の販促強化で買い合わせを促します。

 今年は酒類の二極化がより進むと見ています。そこで当社でしか購入できない高質商品、割安商品の両方を留め型と輸入ワインの開発で揃え、同時に販促も推進していきます。

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