60カ国以上で始まったワクチン接種
日本でもようやく新型コロナウイルスのワクチン認可や接種の話が現実化し、2月12日には最初のワクチンが到着したところだが、世界では、昨年12月8日の英国を皮切りに緊急承認・大規模接種レースの火ぶたが切って落とされた。世界の多くの地域では、感染状況は東アジアよりも著しく深刻だ。だからこそ、ワクチンの認可、獲得、接種を猛スピードで進めている。オックスフォード大学を拠点とするOur World in Dataによれば、ワクチン接種を始めた国は、2月初め時点ですでに60カ国以上。その筆頭は、イスラエル、英国、米国、欧州連合27カ国だが、インド、南米、中東諸国でも急ピッチで進む。
ワクチンの中で最も早く認可されたのはバイオンテック=ファイザーやモデルナなどのmRNAタイプのワクチンで、それぞれ零下70度、零下20度という超コールド・チェーンが必須。どの国でも事前にシミュレーションを繰り返してすら、通関手続き、配送過程での予期せぬ遅滞、3密を避けた接種センターの運営などで度々トラブルを起こしている。特殊な注射器や針の供給、注射のできる人材確保も深刻だ。医師はもちろんだが、看護師、薬剤師などあらゆる医療関係者が動員されなければ、短期間の大量接種体制が組めるはずもない。最初に日本に入るワクチンは筆者の住むベルギーのファイザー工場から出荷されたが、ここベルギーでは、医療分野の超低温配送に特化した運送業者が本領を発揮する。アメリカなどでは、豪雪で立ち往生した配送車から、数珠繋ぎになった車に乗っている人々に歩いてワクチン投与した話や、保管温度の関係でこれ以上保存できなくなった数1000人分を真夜中に周辺住民をたたき起こして接種した話などがあちこちから聞こえている。