コロナ以降一貫しているのはまとめ買いのニーズ

 ――新型コロナ感染拡大の第3波が来ています。足下の状況はどうですか。

 永松 GoTo事業で10月以降、行楽地の店舗が随分良くなっていたんです。でもまた感染が広がり、GoTo事業も運用見直しになりましたので、12月は再びブレーキがかかりました。オフィス街、繁華街の店舗も厳しい状況です。もちろん3~4月の頃よりいいんですが、夏場からあまり変わらない。これに対して住宅立地の店舗は、引き続き堅調に推移しています。

 ――オフィス街や繁華街の店舗は現状、日販がどの程度落ちているのですか。

 永松 オフィス街の店舗も大半はマンションなどがあって、そこにお住まいの方も利用されている。そういう店舗はそこまでではないんですが、事業所の方の利用がほとんどの店舗は前年比で3割ぐらい減っています。同様に大学構内の店舗も厳しいですね。

――すると今年も住宅立地の店舗を中心に家庭内需要をいかに取り込むかが、MD政策の柱になるのでしょうか。

 永松 それが最優先です。従来は会社の近くや外出先など複数の店舗を利用される方が多かったんですが、コロナ以降はご自宅のそばの店舗だけを利用される方が多い。そうしたお客様の行動に合わせた政策を我々も取っていかなきゃいけませんし、コロナ下では完全な回復が難しい店舗を支えていくためにも、家庭内需要をしっかり取り込んで収益を上げていくことが何より重要だと思っています。

 ――そのための具体策は。

 永松 住宅立地の店舗も、実はこの9カ月の間に使われ方が変化しているんです。食品だけを取っても、3~4月は調味料や素材系など内食関連が非常によく売れて、5月以降はそれが中食に移り、その後プチ贅沢と言うんでしょうか。セブンプレミアムのゴールドやデザートが伸びてきました。最初は家で作っていたのが、毎日だと大変なので中食の利用が増え、さらに外食をしないので週末はちょっといいものをという買われ方になってきたのかなと。そして10月からは、低迷していた手巻おにぎりやサンドイッチがまた上がってきました。これは偏にGoToなどで人の移動が増えたからだと思います。

 ――同じコロナ下でもそんな変化が。

 永松 私ども小さいお店なので、こういう変化を見落とさず品揃えや発注量をきめ細かく変えていくことが非常に大事なんですね。ただ売れるものは微妙に変わるんですが、コロナ以降一貫して変わらないのはまとめ買いニーズです。やはり皆さん感染を恐れて、生活に必要なものを1カ所でまとめてお買いになりたい。それで私ども昨年、店舗のレイアウトをもう1回見直しました。ご承知の通り当社は18年から新レイアウトの導入を進めています。冷蔵・冷凍ケースを拡大し、日々の食事に必要なものが極力揃うようにするのが目的ですが、これに加えてチルドのお酒を拡大して惣菜・つまみの隣に配置し、またその向かいでデザートを展開するようにしたんですね。つまり家飲みから食事、デザートまで夕食に必要なものを1カ所に集めることで、ワンストップ機能を高めたわけです。

 ――成果はどうですか。

 永松 店舗によって伸び率に差はありますが、お酒で言えば特にリキュールが牽引して最低でも前年比5%、好調なお店は10%以上伸びています。スーパーさんを含めてご自宅の近くの店舗で、冷えたお酒が色々あるお店は意外と少ないんですよ。また晩酌の最後は小腹が空くので、小容量のパスタやおかゆの展開も始めていまして。こうした関連商品の開発も寄与して、デイリーもデザートも導入店の伸びがその地区の平均を上回っています。従ってこの20年度版新レイアウトを今期中に8000店に導入し、21年度上期までに対象店全店に拡大する計画です。

 ――では19年度までの新レイアウト店も20年度版に替えていくのですか。

 永松 すでに進めています。18年度・19年度版と20年度版は、チルド飲料とお酒の場所が入れ替わっているんです。ただお酒の棚は1個売れると後ろから降りてくるスライダー式になっているので、什器も替えなきゃいけない。そうしないとお店の作業が増えますから。従ってそれをやりながら順次切り替えているんですが、この20年度版も今年はまた修正を加えます。健康を切り口とした商品の拡大が必須になるなどの変化が出てきていますので。ただそれには何かを削らないといけない。それで今、売れなくなっている商品群を洗い出し、代わって何をどう展開するかの研究を色々とやっているところです。

 ――すると昨年改装した店舗も、また新たな什器を入れたりするのですか。

 永松 場合によってはそうですね。

「得を説く」ことがフランチャイザーの仕事

 ――それは聞きしに勝ると言うか(笑い)、変化対応も資金あっての話と言うか。

 永松 私がOFCになって初めて担当したお店は今、お孫さんがやっておられるんです。それはお店が持続的成長をしてきたからで、それには常にお客様のニーズの変化をとらえて、それに対応するための投資をし続けることが必要です。私ども一昨年から加盟店オーナーさんとの意見交換会をやっているんですが、そこではチャージを下げて加盟店の取り分を多くしてほしいという話が当然出てきます。ですが我々純利益の多くは店舗への投資に充てていて、これをやり続けないとお店が繁栄し続けることはできない、お店の持続的繁栄のために投資をやり続けることが必要なんですという説明をして、ご納得いただいているんですね。

 ――ただ昨年10月の経済産業省の有識者検討会で、契約更新を希望するオーナーが全体の59%という数字を真摯に受け止めたいという永松社長の発言がありました。

 永松 これはオーナーさんを対象に昨年7月に行ったアンケート調査の結果で、我々もちろん59%を100%にする努力をしないといけません。ただアンケートはオーナーさん全員が対象で、例えば1年目のオーナーさんに「15年後の契約更新を希望するか」とお聞きすれば、大体は「まだ分からない」と回答されますよね。つまりアンケートの結果と実際の契約更新率は違っていて、実際の更新率は昨年度が92%、今期は今のところそれを上回っているんです。

 ――業界で最も長い15年の契約期間を見直す考えはありますか。

 永松 現時点ではありません。大半のオーナーさんが契約を更新してくださっているのは、もう15年やりたいと思っていただいているということだと思いますので。

 ――コロナで打撃を受けた加盟店が、契約更新をしない例は出ていますか。

 永松 いや、それはなくて、どちらかと言うと逆じゃないかと思います。オーナーさんは地域の色々な方とのお付き合いがおありです。それで個人でご商売されている方の話もお聞きになるらしく、チェーンに加盟しているメリットを実感したとか、一番大変な時にマスクや見舞金を支給してもらって助かったとか、感謝の言葉を未だに頂戴します。不安とご苦労が増す中でも加盟店さんには本当に頑張っていただいて、感謝の気持ちは私どもも全く同じなんですけど。

 ――加盟店との関係ではコンビニ本部は昨年、公正取引委員会の改善要請も受けました。そこではOFCが強制になることを恐れて、やるべき経営指導ができなくなる懸念はありませんか。

 永松 本来「得を説く」ことがフランチャイザーの仕事であり、その力がこれまで以上に問われると思っています。つまり加盟店さんの得になることをいかに説得できるか。これがちゃんとできて、なるほどその方が得だなと思っていただければ、それは強制ではなく経営指導と受け止めていただけますから。それにはOFCがまず情報をきちんと持っていることが不可欠です。例えば同じエリアの店舗でこれだけ売れているというデータを示して得を説けば、それならうちも入れてみるよと納得して仕入れていただけますよね。

 ――確かに。

 永松 このデータを持って経営指導に当たることについては、私ども従来から力を入れてきたんですが、ただ今までは全店一律の推奨がベースでした。新規商品で言えば、これは味が良くて販促も宣伝もやるので絶対に売れます、だから大々的に展開しましょうと。とにかく価値ある商品を開発し、宣伝も投資もしてそれを広げていくというやり方をずっと続けてきて今があるんですね。でも2万店になりますと、それだけでは全店の売り上げを上げることは難しい。実はセブンイレブン全店で客単価が一番高いのは北海道北見市のお店で、逆に一番低いのは東京・銀座1丁目の店舗です。

 ――逆ではなくて(笑い)。

 永松 皆さんそう言われるんですけど(笑い)、北見のお店は近くにスーパーなどもないので、お客様は車で来て生活に必要なものを沢山買っていかれる。でも銀座1丁目の店舗はコーヒー1杯などの利用が多く、使われ方が全く違うんですね。それで今進めているのが「個店行為計画」です。OFCが担当する同じエリアの店舗でも、周囲が住宅のお店と学校の前のお店では使われ方も客層も違います。それを踏まえた上で得を説こうということですね。

 ――つまり個店ごとの最適な品揃えをアドバイスすることが、経営指導のベースになるのですね。

 永松 それにはOFCの力量をもっと上げていかなきゃいけませんし、個店ごとの品揃えを徹底的に追求するとなると時間もかかります。そこで加盟店さんへの情報発信のあり方を抜本的に改めました。商品、販促、宣伝など全店一律の情報は動画を使って本部からダイレクトに発信し、OFCは個店の課題解決に専念できる体制にしたんですね。そうすることで名実ともに個店に寄り添ったアドバイスをしていきたいと思っているんです。

宅配需要を取り込み加盟店を支援

 ――コロナ下で食品強化のドラッグストアが急増しています。コンビニの土俵に上がり始めたドラッグとはどう戦っていきますか。

 永松 ドラッグさんにはH&BCという武器がおありですが、私どもには専用工場、チームMDなどおいしい中食を開発し続ける仕組みとノウハウがあり、2万店の店舗網もあります。これは一朝一夕にはできないものですしね。そのインフラを生かして、我々は我々にしかできないことをやり続けるということに尽きるんじゃないかと思います。

 ――今年はスマホで注文するネットコンビニも、新たなステージに入るのでしょうか。

 永松 現在、北海道、広島、東京の300店で行っている実験店を、今年は1000店に広げます。ネットコンビニについてはご承知の通り試行錯誤が続きましたが、「タイムコンビニエンス」のコンセプトが定まり、昨年、注文から最短30分で夜11時までお届けするサービスを開始しました。それでお弁当と缶ビールと翌朝の食パンとか、やはり夜の出前的な利用が増えています。課題は配送コストをもう少し引き下げるための仕組み作りで、目下そこに力を集中しています。これはなかなかハードルが高いんですけど、コロナが収束しても宅配需要は増えると思いますし、コロナ下ではその需要を取り込むことは加盟店さんの支援にもなりますのでね。なるべく早期に仕組みを構築して、対応店を拡大していくつもりです。

 ――その加盟店支援で今年、最も力を入れることは何でしょう。

 永松 一言で言えばDXかなと思います。これがすべてに絡みますよね。店舗のオペレーションも宅配、本部の商品開発、店舗開発、販促もすべてでデジタルを活用して、2万店の店舗、1日2000万人のお客様、1日6000万個の販売商品を持つチェーン全体の生産性を上げていく。その一方でOFCが個店に寄り添う「個店行為計画」を同時並行で進め、言わばデジタルとアナログ、全体と個が車の両輪として回っていくチェーンに脱皮していこうと。今年はその1歩を大きく踏み出せる年に是非ともしていきたいと思っています。(構成・石橋忠子)

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