「3密」回避を徹底、来場者に安心を提供

 全国スーパーマーケット協会は、「第55回スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2021」を来年2月17~19日の3日間、千葉市の幕張メッセ全館にて開催する。

 SMTSは小売流通業の業界団体が主催する、BtoB向けの商談展示会だ。出展者は食品・日用品メーカーから卸、店舗設備.資材関連、店舗開発、情報サービス関連企業、さらに官公庁や地方自治体と幅広く、新商品や業界のトレンド情報の収集、商談の場として、長年多くの来場者に支持されてきた。

 第55回については今年6月、横山清全国スーパーマーケット協会会長(SMTS実行委員長)が、継続して開催することに意義があること、55回という記念の回であること、安全対策をしっかり行うことの3点に重きを置いた上で、開催することを決断。全国スーパーマーケット協会の富張哲一朗・事業部展示会課長も「事務局として、来場者、出展者、協力会社など、トレードショーにかかわるすべての皆様が安心して参加いただけるよう、対策をとっていく」と力を込める。

第55回も千葉市・幕張メッセ全館を使用する

 感染拡大のリスクを抑える上で、何より欠かせないのが「3密」の回避だ。今回は、国際見本市連盟、および日本展示会協会が発表したガイドラインを参考に、来場者・出展者の人数制限、通路の拡幅を行う。

 まず来場者数を制限するべく、完全招待制を採用する。従来、来場者は出展者や主催者が配布する招待券がなくとも、業界関係者であれば、事前登録や当日入場券の購入で会場に入ることができた。だが今回は招待券の保有者のみに来場を限定し、かつ招待券に記載されたID、パスワードを使い、事前にオンラインサイトでの登録が必須となる(表参照)。加えて接触を回避するべく、会場入口にはパスの発券機のみを設置し、有人の登録カウンターは設置しない予定だ。

 会場内ではメイン通路、その他の通路をそれぞれ拡幅することで、ソーシャルディスタンスを確保する。これに伴い、出展可能小間数を例年比で3割減とした。合わせて各出展ブースの1小間あたりのスタッフ数も減らしている。

 このほか安全対策では、来場者、出展者双方にマスクの着用を必要とする。出展者に対しては、フェイスシールドやマウスシールドだけの着用ではなく、必ずマスクの上にシールドを着用してもらうことを徹底する。また試食については、協会独自のガイドラインを作成し、集客だけを目的とした試食は控える、来場者が試食でマスクを外している間は問いかけないなど、接触と飛沫を防止するための細かな対応を出展者に求めていく(イラスト参照)。

商談会、セミナーではオンラインを積極活用

 安全対策に万全を期す一方、展示会の内容については例年通り、見どころが満載だ。

 今回は「第55回SMTS2021」を中核として、同じく全国スーパーマーケット協会主催の「デリカテッセン・トレードショー(DTS)2021」、食品産業センター主催の「第16回こだわり食品フェア2021」が同時開催となる。

 会場は例年同様、幕張メッセの全館を使用し、1~8ホールではSMTSの「生鮮」、「加工食品」、「ケアフーズ」、「菓子.スイーツ」、「飲料・酒類」、「日用品・雑貨」、「情報・サービス」、「店舗設備・資材」の各ゾーンと、DTSを設ける。9~11ホールではSMTSの「地方・地域産品」ゾーンとこだわり食品フェアで、地域の食を前面に打ち出していく。

 今回はコロナ禍を受けて例年の出展を見送った企業がある一方、初出展企業も多く、その顔ぶれに注目だ。初出展となるのは、小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を提案するNTTドコモなど。またプラスチック食品容器の中央化学は久方ぶりの出展となる。

 また今だからこそ注目したいのが、地方・地域産品ゾーンだ。今回は約1000社が一堂に会する。外食や百貨店ルートなどの売り上げの落ち込みを挽回しようと、地方の生産者や中小メーカーが多数、出展を決めている。また地元企業を支援しようと地方自治体や金融機関も積極的に動いており、自治体としては、秋田県、山形県、福岡県が初出展となる。

 業務用メーカーも同様だ。外食やホテルなどの厳しい状況を打開するべく、家庭用での新たな販路を求めて出展する動きが見られるという。「これまで食品スーパーでは扱えなかった魅力的な食材も出展されるはず」と富張課長は期待を寄せる。

初出展、久方ぶりの出展企業の顔ぶれに注目だ(上)、地方・地域産品ゾーンには
約1000社が一堂に会する(下)〈上下とも前回の様子〉

 業界関係者への情報発信を行うSMTSの主催者企画では、オンラインを積極的に活用する。毎年、東京商工会議所と共催で行っているビジネスマッチング企画では、会場に来られない地方の出展者に対応するべく、オンライン商談を併用。スーパーマーケットのほか、百貨店やコンビニ、卸など約70社のバイヤーを招聘する予定で、200社程度のサプライヤーを募集する。被災地復興支援として10年続けてきた東北のサプライヤーのマッチング参加料無料については、今回までの適用となる。

 ジェトロ(日本貿易振興機構)とタッグを組んで行っている食品輸出商談会についても、今回は海外にあるジェトロ事務所とオンラインでつなぎ、ヨーロッパやアジア企業を中心に、商談の機会を提供する。

 毎年様々なスピーカーが登場するセミナーステージや、専門家から商品知識やトレンドを学ぶ「バイヤー大学」については、基本オンラインで配信し、会期以降も一定期間視聴できるようにする予定だ。セミナーでは、横山清会長の講演のほか、地域産品、防災、SDGsなどをテーマにしたセミナーを用意。バイヤー大学では、青果、精肉、鮮魚、惣菜、ワイン、チーズ、ロカボなどをテーマに開講する。新たな取り組みでは、スーパーマーケットの社会的活動を応援する「スーパーマーケットGood Action Initiatives」実行委員会による取り組み企業の表彰式を行う予定だ。

 このほか、日本品質にこだわった酒類を紹介する「てづくりNIPPON」、HACCP制度化に対応するための「食の安心・安全対策」の二つのコーナーは、今回も継続する。

 てづくりNIPPONでは、今回も引き続き日本酒、焼酎、日本ワイン、クラフトビールのメーカー30社が出展予定。業務用の不振を受け、販路拡大を狙う各社の提案に注目が集まる。

 食の安心・安全対策コーナーでは、来年6月の改正食品衛生法完全施行を目前に控え、衛生対策関連メーカーによるブース出展や情報発信コーナーを設け、小売業や食品産業への周知徹底と対策を促していく考え。

 開会式については無観客での開催を予定している。

「てづくりNIPPON」、「食の安心・安全対策」コーナーは今回も継続する(写
真は前回の様子)

ちょっとリッチな惣菜商品が集結

 デリカに特化した商談展示会「デリカテッセン・トレードショー2021」では、中食に関する企業.団体のブース出展、恒例企画となった「お弁当・お惣菜大賞」表彰式、および受賞商品の展示のほか、一部商品については会場内で購入し、実際に食べることができるのが特徴だ。今回は、表彰式は無観客でのライブ配信を予定している。

 お弁当・お惣菜大賞には、スーパーマーケットや専門店などから前回を上回る多数の応募があった。全体的な傾向としては、外食を控えるお客に家庭での食事を楽しんでもらおうと、地元産品やちょっとリッチな食材を使った商品の応募が多かったという。今回は定番商品部門に設定した「中華点心」を含む11部門で、それぞれ受賞・入選商品を選出する。

 DTSと合わせて、年間を通じてデリカに関する情報を発信する勉強会「デリカスタディ」では、すでに今年7月、9月、11月の回が開催済みだ。セミナー同様、リアルに加えてオンラインでの対応を行ったところ、参加者が増え、好評を得ているという。来年1月にも開催を予定している。

 今年はスーパーマーケットには追い風が吹いたが、状況が沈静化すれば、来年は再びスーパーマーケットにとって厳しい環境に戻ることが想定される。そこで改めて求められるのは、他社との差別化、独自性のある商品、サービスであることは間違いない。第55回の節目となるSMTSは、スーパーマーケット各社の戦略を後押しする重要な場となりそうだ。

「お弁当・お惣菜大賞」の表彰式は無観客のライブ配信を予定している