日本生活協同組合連合会(日本生協連)が福祉介護事業の強化に乗り出した。6月23日、コープみらいなど会員生協、生協を母体に設立された社会福祉法人とともに中間支援機能を持つ「一般社団法人全国コープ福祉事業連帯機構」(連帯機構)を設立。自立した在宅生活を支援するための介護サービス「生協10の基本ケア」の導入推進をはじめ、介護・福祉人材の確保・定着と教育の仕組みづくり、経営ノウハウの蓄積と共有・経営サポート強化の協同事業を展開する。

 連帯機構を設立した背景には、日本生協連の2030年ビジョンで「生涯にわたる心ゆたかなくらし」を打ち出していることがある。この実現には福祉介護事業の強化と事業戦略の明確化が不可欠だ。また急速な少子高齢化の進行もある。2021年度の調査では、全国生協組合員の約半数を60代以上が占め、平均年齢は59歳を超えている。組合員の意識調査では不安に感じる社会問題について66%が「老後の備え(年金や介護など)」と回答したことから、連帯機構では組合員のニーズに応え、安心して暮らし続けられる地域社会づくりに取り組む。

 さらに、生協グループのスケールメリットも創出する。生協グループ全体の福祉事業高は1200億円で、「介護業界最大手に迫る規模」(連帯機構・山際淳常務理事)。だが、各生協や社会福祉法人がばらばらに経営しているため、協力関係も限定されている。そこで連帯機構を中心に協力関係の構築、規模拡大を図ろうというのだ。

 22年度は今後の本格的な展開、推進体制構築に向けた準備と重点内容を決めたスタートダッシュの年と位置づけ、3カ年計画に基づき段階的に取り組みを実施していく。具体的には三つの共同事業として、生協10の基本ケアのブランド化では、会員生協や社会福祉法人のチャレンジ宣言を推進し、職員向けの学習の場づくり・教育体系の標準化を進める。介護人材の確保では、11月11日の介護の日に合わせて採用ポータルサイトを開設する予定。経営ノウハウの蓄積では、エリアごとの支援や相談しやすい体制を整備。理事会の下に「経営対策委員会(仮称)」を立ち上げ、経営情報の共有、今後の対策などを協議する計画だ。

 連帯機構の代表理事に就任した日本生協連の二村睦子常務理事は、「連帯機構に参加した生協と社会福祉法人と力を合わせ、福祉事業を強化、推進したい」と力を込める。連帯機構の村城正代表理事も「福祉事業者と組合員、市民がいっしょになって住みよい街づくりを実現したい」と意欲を示す。連帯機構設立により、地域の中で生協の存在感がさらに高まることになりそうだ。

(冒頭写真  全国コープ福祉事業連帯機構は、 自立した在宅生活を支援するための介護サービス「生協10の基本ケア」 導入を推進する)