日本酒類販売は6月30日、2020年3月期決算を発表した。新規帳合の獲得、既存取引先の深耕により、連結売上高は前期比1.9%増の5604億円に拡大。一方で、配達運賃やセンターフィーの高騰で物流経費が約11%増加。利益を圧迫し、営業利益は14.7%減の31億円、経常利益は12.0%減の38億円、当期純利益は14.2%減の25億円となった。

 今期はウィズコロナを踏まえた変化対応を最重要課題に据え、営業戦略の見直しに取り組む。外出自粛、飲食店の休業に伴い、この4、5月は業務用の販売が低迷。全社ベースの売上高前年比は1割減と落ち込んでいる。これに対し、日酒販は小売り店頭での価値訴求を強化。健康提案、オンライン飲み会提案など新しいニーズに沿った売り場展開を強めるほか、新しい酒体験に向けた「コト」需要の創出を図る。

 コロナ禍で需要が高まるECについては、専門部署として設置した「流通第6本部」の機能を高め、業態に特化した営業を展開。また業務用の立て直しに向けては飲食店の要望を集約し、メーカーと一体となった支援企画の立案を進めている。

 商品戦略では、強みとする和酒にて、熟成焼酎など付加価値品の訴求を強化。和酒に次ぐ収益源であるワインでは、中高価格帯の直輸入品やオーガニックのラインアップを拡充するほか、子会社NEWSが国内充填する「バッグ・イン・ボックス」の販路拡大を掲げる。巣ごもり消費の浸透で伸長するRTDの分野では、4月にオリジナル商品「田苑 金ラベル ハイボール」「ヤエス レモンサワー缶」を投入。販売好調を受け、今後もさらなる導入率アップを図る。

 田中正昭社長は、「環境変化に備え、経営基盤の強化も推し進める」と宣言。経費のゼロベースでの見直しを全部署に指示し、デジタル技術も取り入れながらローコストオペレーション推進に取り組む。コロナ禍で実施が進んだリモートワーク、フレキシブル勤務、班体制勤務は今後も継続。効果検証で労働効率を高めつつ、多様な働き方を実現する。

 物流コストの削減に向けては、引き続き得意先に対して配送ロット・頻度の集約、付帯作業軽減を交渉しながら、サプライチェーン全体での効率化に取り組む。またスマートフォンを活用した運行管理システムの導入や、同業他社との共同配送を全国の拠点に広げ、業務改善と卸機能の強化を両立させる方針だ。

 改正酒税法について田中社長は、「昨年の消費増税前後には見積もり合わせなどで納入価格の低下も見られた」とした上で、「今後も法律の趣旨を十分に理解し、適切に対応していく」とした。