震災を乗り越え、南三陸に新工場を竣工

「豊かな食文化の担い手として、常に新しい価値を創造し続ける」を基本理念に掲げるカネタ・ツーワンが、商品開発の領域を広げている。地元宮城の食材を使用した珍味や海苔、乾物の製造加工で培ってきた技術力を生かし、付加価値を高めた水産加工品や仙台名物の牛たん、さらにレトルト商品の開発にも踏み出す。既存領域に縛られることなく、時代と共に変化するお客のニーズに対応した商品を開発している。

 カネタ・ツーワンは宮城県仙台市に本社を構える。国内の製造拠点は大きく三つで、宮城県仙台市で、珍味・豆菓子・ナッツ・肉製品・惣菜を、南三陸町では生珍味・水産加工品を、そして新潟市では海苔・米飯惣菜・カット野菜をそれぞれ製造している。

 カネタ・ツーワンのルーツは三陸海苔の行商だ。1993年には現在の水産加工品の第1工場を設立。以後、同町では第2、第3工場と拠点を増やしていった。2011年の東日本大震災ではその2工場が津波で消失したが、逆境の中でもスピードを上げて復旧、復興に尽力。11年3月末には工場を再稼働し、翌年、翌々年と増設を重ねて工場能力を拡張。15年には海のそばに第2工場を新設するなど、付加価値の高い商品開発を続けている。

瓶詰めの新商品が若い層の支持を獲得

 その南三陸第2工場発の新商品で、目下好評を博しているのがさばと鮭のほぐし身の瓶詰め「おかわりシリーズ」だ。「おいしい焼き塩さばほぐしました」、「おいしいさば味噌ほぐしました」、「おいしいししゃもの卵と鮭ほぐしました」の3種類で、内容量は120グラム。今年3月に食品スーパーやコンビニで発売したところ、出荷実績が従来のほぐし身瓶詰めと比べて4月は3.7倍、5月も1.5倍と2桁以上の大幅な伸びを記録している。

 理由はさばブームの後押しに加え、商品のターゲティングが見事にはまったためだ。ほぐし身の瓶詰めはカネタ・ツーワンが従来から手掛けてきた定番商品だが、メインの購買客は年配層。「そこでヤング層や子どもたちに支持してもらえるような商品設計にしました」と宮野智征・商品部長は語る。

 こだわりの一つは味。「焼き塩さば」の塩は伯方の塩を使用。油は健康に配慮してオリーブオイルで仕上げることで、しっとりとした味わいを実現した。「さば味噌」のほうは信州の生味噌を使用し、風味豊かでまろやかな味わい。「ししゃもの卵と鮭」は市場に多い鮭の瓶詰めにししゃもの卵を加えることで、プチプチとした食感が楽しめるようにした。

 加えてパッケージにはかわいらしい海のデザインをあしらった。調理レシピも付けていろんな料理にも応用できることをアピール。「特に女性バイヤーさんの引き合いが良かった」と宮野部長は手応えを語る。

おかわりシリーズの「おいしい焼き塩さばほぐしました」(中央)、「おいしいさば味噌ほぐしました」(左)、「おいしいししゃもの卵と鮭ほぐしました」(右)

ニーズの変化を捉えレトルト製品の開発に着手

 水産加工品だけではない。ここへきて同社の新たな看板商品に育ちつつあるのが「仙台発祥厚切り牛たん」だ。米国産の牛たんを輸入し、こだわりの味付けをして冷凍。食品スーパーの精肉部門には業務用として、ECの楽天市場や高速道路のパーキングの土産物屋などには一般消費者向けで販売している。

仙台発祥厚切り牛たん

 もともとカネタ・ツーワンでは牛たんジャーキーを製造販売しているが、仙台の企業としてもっと差別化できる商品を開発していこうと15年に牛たんの販売を決断。その味がお客に支持され、楽天市場では総合ランキングで1位(18年6月19日リアルタイム)を獲得するなど好評を得ている。

 この新領域開拓の勢いをそのままに、今秋にはカネタ・ツーワンとして初のレトルトのカレー、シチューの販売も計画している。中でも牛たんカレーは、ルウが素材に負けないようフォンドボーにこだわった。「今後はさらに即食ニーズが高まっていくはず」(田畑英樹・専務取締役)として、同社ではカレー以外にもレトルト製品の開発に注力していく方針。従来の枠を超えた商品開発で、これまでにない新たな価値をどんどん生み出し、食品メーカーとしての存在意義を高めていきたい考えだ。

今秋発売予定の「仙台発祥牛たんカレー」(中央)、「仙台発祥牛たんシチュー」(右)、「瀬戸内レモンカレー」(左)

<カネタグループ会社概要>
本社:〒984-0015 宮城県仙台市若林区卸町3-8-1
電話:022-782-0881
創業:1953年(昭和28年)6月
事業内容:珍味、乾物、海苔、惣菜、豆製品などの販売
(写真はグループ会社ケーエスフーズ第1工場)