二桁成長のザ・ビッグを軸にSM・GMSは運営体制を刷新
イオン北海道は今期、DS業態ザ・ビッグの戦略的強化に本腰を入れていく。背景にあるのは道内の消費環境と競争環境の変化だ。昨今の物価高により消費者の生活防衛意識が一段と高まっていることに加え、ロピアやトライアルといった域外DSが北海道でも勢力を拡大。限られたパイの奪い合いが激化している。青栁英樹社長(冒頭写真左)は「北海道はエンゲル係数が特に高くなっており、必要なものや量しか買わない傾向が強まっている。競争環境も相変わらず厳しい。各社とも価格で戦いつつ、自社のポジションや強みを改めて見極めているのではないか」と分析する。
そうした状況下でもエリア一番の価格を訴求するザ・ビッグの業績は好調で、前期の既存店売上高は103.7%と、GMS事業101.0%、SM事業101.9%を上回り、全店ベースでは110.8%と唯一の二桁伸長を記録。24年に承継した西友店舗をこの3業態に転換し、今年3月時点でそれぞれ5~10%伸びているが、中でもザ・ビッグへの転換店が最も伸び率が高いという。
これまでザ・ビッグはマックスバリュ(MV)からの転換が主だったが、昨年11月には初めてGMSをリニューアルする形でザ・ビッグ清田店(札幌市清田区)をオープンした。当初は旧西友を24年11月にイオン札幌清田店に転換したが、昨年4月に約700mの至近にロピアが出店。清田区にはザ・ビッグがなかったこともあり、1年足らずで異例の再転換に踏み切った。なお、同店はイオン札幌清田ショッピングセンター内の核店舗という位置付けで、食品売り場をザ・ビッグ仕様に刷新。5月21日の株主総会を経て新社長に就く予定の取締役執行役員 営業本部長の小寺博之氏(冒頭写真右)は「清田店は今までの業態転換店よりも、さらに伸びている。品揃えは既存店と変わらないが、もともと商圏が広いGMSとして営業していたので、より広域から集客できている点が好調の要因」と破顔する。

イオン北海道では、前述の3業態に小型店のまいばすけっとも加えたマルチフォーマット戦略を推進している。札幌市内の元町エリアでは約2km圏内に、この4業態を集積。「昔から、振り返ればイオンしかない」(青栁社長)というほどのドミナントを構築している。また、前述のザ・ビッグ清田店も3km圏内にイオンに加えMV2店舗があるエリアだが、小寺取締役は「周辺の店舗も数字は落ちておらず、各業態を揃えることで多様なニーズに応えられるのが我々の強み」と強調する。こうした業態配置の最適化を札幌圏中心に進めていく方針だ。
今期から5カ年の新中期経営計画ではザ・ビッグを成長ドライバーに据え、現時点で唯一の新店として秋頃に千歳市に出店を予定。同時にSM、GMSの新モデルづくりにも着手する。SMでは均一化していた店舗形態を見直すべく、前期にMV2店舗を活性化して生鮮デリカに新MDを導入した。水産ではそれまでGMSが主だった鮮魚寿司を本格展開し、GMSでもほとんど取り組んでいなかった魚惣菜にも注力。畜産では壁面の冷蔵ケースに加えて、その前に平ケースも展開することで売り場を広げ、ブランド肉や大容量パックの売り込みに成功している。デリカでは店内調理の手伸ばしピザを打ち出し中だ。小寺取締役は「活性化した2店舗が順調に伸びているので、今期はその方向性をさらに深掘りしていく。同時に、商圏に応じて数パターンに分けての取り組みも進めていきたい」と競争力強化を狙う。
GMSでは館の魅力向上へ向けて、昨年3月に新設したディベロッパー本部が機能している。旧西友を24年12月にリニューアルしたイオン手稲駅前ショッピングセンター(札幌市手稲区)では昨年夏に屋上駐車場でビアガーデンを初開催し、遊休施設を有効活用。同年9月の専門店リニューアルでは、地元住民の要望を受けてスターバックスコーヒーの出店を実現したほか、北海道初・手稲区初のテナントを多く揃えた。現在、リーシング部隊だけで50名以上がテナントの開発や二次メンテナンス、経営管理などを担っており、高校生のダンス大会や書道パフォーマンスなどのイベント開催でも集客効果を生んでいる。青栁社長は「専門店のリーシング力が圧倒的に高まった。新しい発想を入れるという意味では良いスタートを切れたと思う」と手ごたえをにじませる。また、直営の衣料住余は各店舗の状況や商圏に応じて拡縮を図る方針だ。こうした施策を効率的に進めるべく、今年3月には組織改編を実施。SMとGMSを一体で運営してきた体制を見直し、業態ごとに事業部を置く運営体制へ移行した。
売上高4400億円以上へ5年間で824億円を投資
こうした「各業態の進化」を含めて、新中計では三つの重点戦略に取り組む。二つ目の「商品本位の改革」では、PBトップバリュの拡販で価格戦略を強化すると同時に価値提供にも注力し、消費の二極化に対応。「来店動機になる『イオンっていえばこれだよね』という看板商品の開発」(青栁社長)を進めており、その代表例が昨年10月に発売した「本気!の唐揚げ」だ。鶏もも肉を従来の唐揚げより大粒にカットし、北海道産小麦と大豆を使用した丸大豆醤油に焦がし醤油をブレンド、生姜やにんにく、昆布風味で味付け。唐揚げ粉にも道産小麦を使い、ジューシー感を引き立てる薄衣に仕上げている。すでに発売から5カ月で売り上げ2億円を超えるヒットを記録。さらに、新たな領域への挑戦として、今期はヘルス&ウエルネス関連商品も強化する方針だ。
三つ目の「強固な事業基盤の構築」ではDXの推進とPCの拡充に取り組む。前期はセルフレジを23店舗に、電子棚札を32店舗に導入し、それぞれ累計100店舗以上に設置が完了。店舗決済サービス「レジゴー」の拡充でさらに人時の削減を図り、前期末にデイリーで開始したAI発注も今期から本格的に導入を進める。また、石狩PC(石狩市)を拡充して製造能力を強化するとともに、今期はエリアごとに拠点からの配送を可能にすることで、つくりたて商品を効率的に届ける体制を構築する考えだ。
前期は売上高3800億円(前期比7.4%増)、営業利益83億円(5.6%増)、純利益37億円(3.5%増)の増収増益で着地。売上高は過去最高を更新し、前中計の目標もクリアしたが、営業利益は前中計で掲げた157億円の約半分にとどまった。販管費の増加を生産性向上でカバーしきれなかったことが主な要因であるだけに、業務改革は喫緊の課題といえる。
「挑戦の年」(小寺取締役)と位置づける今期は売上高3920億円(3.1%増)、営業利益87億円(4.4%増)、純利益30億円(19.6%減)を計画。一部店舗の減損損失や店舗投資を織り込み、増収最終減益を見込む。新中計では最終年度の31年2月期に売上高4400億円以上、営業利益110億円以上を掲げており、5年間で店舗に701億円、インフラに123億円を投じて企業価値の向上を目指す。収益性を改善し、成長軌道へ乗せられるか。北の大地で新たなチャレンジが始動する。(本誌・小島知之)
青栁英樹 社長/地方で貴重な買い場を提供し、GMSのフォーマットをやり続ける

外部環境がどうであろうと、我々は我々の価値をきちんと訴求していくことが重要です。これまでもずっと道産の商材にこだわってきたし、トップバリュグリーンアイ「純輝鶏」などの他社にない商材を持っているのは大きな強み。お客様は価格にシビアですが、たとえ安くても大量には買いません。不思議なもので、客数が増えてもバスケット単価は上がっていない。たとえば1回2000円までしか買わないという上限があって、単品の価格が上がっても買い上げ点数は減り、バスケット単価は変わらない傾向にあるとみています。この先、中東情勢の影響が顕在化してくれば、さらにシビアさが増してくるかもしれないし、決して順調だということはありません。
一方で、当社はGMSのフォーマットをやり続けるという使命も帯びています。特に地方で買い場が減少している書籍の売り場を開設したり、少子化の中でランドセルの拡販に努めて道内シェアを拡大したり。ほかのスーパーとの差別化にもなりますので、品種の欠落がないように、今後もニーズに合わせて柔軟に対応したり、お客様の変化を見極めていったりという動きは欠かせません。


















