日本パレットレンタル(JPR)が展開する納品伝票電子化の取り組みに新たな導入事例が加わった。2025年11月、伊藤忠食品が昭島物流センターで納品伝票の電子化の本運用をスタートした。これまで物流業界では、伝票電子化の重要性を認識しつつも、「相手先が導入したら検討する」といった様子見の企業が多かっただけに、入荷側の卸が一歩踏み出した意義は大きく、業界関係者の注目が集まっている。
納品伝票の電子化・共有化システムの概要
今回採用されたシステムは、JPRの納品伝票電子化・共有化システムDD Plus(ディーディープラス)だ。DD Plusは、これまで各社各様だった紙の納品伝票をデジタル化し、印刷や仕分け、押印、収受といった業務を効率化する。JPRは、子会社のTSUNAGUTE(ツナグテ)と連携して普及を進めている。
DD Plusが解決を図ろうとしている現状の課題を確認しよう。
トラックドライバーは、納品時に納品伝票を届け先に提出し、控えとなる受領書を持ち帰らなければならない。そこで、受領書を受け取るための待機が発生することがある。「物流2024年問題」への対応が急がれるなか、荷役作業の効率化と併せて注目されているポイントだ。
大規模な出荷拠点では毎日、出荷に伴い2000枚、3000枚という単位で納品伝票を発行する。限られた時間と人員の中で印刷し、納品トラックごとに仕分けしてドライバーに渡すという作業を終えなければならない。
こうした作業や、作業に伴う待ち時間の発生が出荷から納品に至るプロセスで繰り返されることが、物流現場の隠れた負担となってきた。DD Plusによる納品伝票の電子化によって、発着荷主、物流事業者それぞれが負担する紙の伝票に関わる非効率が解消する。
電子化がもたらすリアルタイムに共有の効果
伝票電子化による効果は、印刷や仕分けのように伝票を物理的に扱う作業の効率化に留まらない。
「従来、伝票を介して受け渡されていた情報が、リアルタイムに共有できるようになる」とJPRデジタルロジスティクス事業開発部DL営業グループの海老澤博規グループ長(写真)は語る。
受発注の大半がオンライン化されている一方で、物流データは紙を介したやり取りが一般的だ。当然のことながら、紙の伝票は、手元に届くまで記載内容を把握することができない。また、目視での確認が必要となり、そのままシステムで処理できない点が課題だ。
このため入荷拠点では、伝票を受領してから検品作業用のデータを抽出する、伝票と発注リストを机上で照合する、といったアナログな作業が発生している。
DD Plusは、納品伝票そのものの取り扱いのみならず周辺の工程も含めた効率化を実現する。過去の事例では、出荷拠点で伝票発行作業が3~7割減少したほか、照合作業が不要になった。同様に入荷拠点では、検品データの準備業務を最大で5割削減できたという。

標準フォーマットでデータ連携を実現する
伝票の電子化は、サプライチェーン全体の効率化につながる取り組みでもある。「伝票の電子化を通じて目指しているのは、企業間をまたいだデータ連携」(海老澤グループ長)だ。人口減少が確実ななかで、省人化はもちろん、倉庫やトラックといった物流リソースの共有が進むと予測されている。国が掲げるフィジカルインターネット構想もこの文脈でつながっている。納品伝票のデジタル化は、ペーパーレスにとどまらず、データを活用した物流改革の第一歩という訳だ。
ただし、その実現には、データフォーマットの統一が必要だ。データフォーマットの不統一は、ソリューション間でのデータ変換という新たなコストだけでなく、その不安自体が新しいシステムの導入を妨げる要因ともなりかねない。その点、DD Plusは「多様なソリューション間の連携を前提にした標準フォーマットを採用」(海老澤グループ長)しており、日本加工食品卸協会が承認するフォーマットや国主導のプロジェクトで策定された「物流情報標準メッセージ」にも準拠している。これは、DD Plusは他社のアプリケーションとも連携がしやすいということだ。予め多企業間での運用が考慮されていることもDD Plusの特長の一つと言えるだろう。
改正法の施行で企業の垣根を超えた連携が進む
今回納品伝票の電子化を行った伊藤忠食品の昭島物流センターでは、26年度末には20社の納品伝票を電子化する計画で、同時に導入拠点の拡大も視野に入れているという。
国の政策の動きもある。改正効率物流化法の施行によって、26年から特定荷主に該当する企業には、物流統括管理者(CLO)の選任や中長期計画の作成が義務付けられる。これまで以上に企業の垣根を超えた連携が進むことが期待されるなか、納品伝票の電子化を導入する企業も増加しそうだ。
「企業をつなぐという、レンタルパレット事業の特長を活かし、納品伝票電子化の普及に貢献したい」(海老澤グループ長)。
JPRは、DD Plusを通じた伝票電子化を幅広い企業に呼び掛けている。





















