アマゾン・ドットコムは12月1日、シアトルとフィラデルフィアの一部地域で、約30分以内に日用品や生鮮食品を届ける超高速配送サービス「アマゾン・ナウ」の運用を開始したと発表した。日用品から食品、電子小物まで数千点の商品を、ほぼ“料理を始めてから食材を買いに行く”感覚で注文できる体験を目指すもので、同社が長年取り組んできた即時配送モデルの進化形と位置づけている。

 同サービスは、緊急性の高い買い物ニーズに対応することを目的とし、対象地域の消費者はアマゾンのアプリ、またはウェブサイト上の「30分配送」メニューから購入が可能となる。配送対象商品には牛乳、卵、野菜などの生鮮食品、歯磨きや化粧品、紙製品、ペット用品、季節商品、一般用医薬品、スナック類などが含まれ、家庭で日常的に利用される幅広いカテゴリーが取り揃えられている。

 プライム会員は1注文あたり3.99ドルからの割引配送料が適用される。非会員が13.99ドルを支払う必要があることを考えると、プライム会員向けの優遇が大きいことが分かる。15ドル未満の注文には1.99ドルの小口手数料が加算される仕組みで、アマゾンは利用者の利便性と配送コストの最適化を図っている。

マイクロフルフィルメントで30分配送を実現

 アマゾンは今回の超高速配送を実現するため、シアトルおよびフィラデルフィアの生活圏に近接する場所へ、小規模で専用設計のフルフィルメント拠点を配置している。従来よりもコンパクトかつ効率的なオペレーションを可能とする施設であり、棚入れ・ピッキング・梱包の動線を最短化し、配送パートナーの移動距離も最小限に抑える仕組みを整えている。

 これにより、注文から出荷、配送までのプロセスが圧縮され、30分以内での到着を可能にした。アマゾンは、従業員の安全性にも配慮した設計となっていると強調しており、超高速化による作業負荷増加を抑えながら効率化を実現している点も特徴である。

ホールフーズとの連携モデルでも新展開

 今回の発表と同時に、アマゾン傘下のホールフーズ・マーケットでは、アマゾンの商品を「店舗内の店舗」として扱う新コンセプトが公開された。ペンシルベニア州プリマス・ミーティングの店舗には、自動化された1万平方フィート規模のマイクロフルフィルメントセンターが配置され、1万2000点以上の食品・日用品がオンライン配送や店頭受け取り向けに提供される。

 この新モデルは、ホールフーズが強みとする自然食品・オーガニック食品と、アマゾンのナショナルブランド商品や日用品を一度に購入できる利便性を提供するもので、両ブランドの融合を象徴する取り組みといえる。

 アマゾンは近年、即時配送モデルの強化を積極的に進めている。プライム会員向けには、従来の当日配送や翌日配送、一定条件を満たせば無料となるオーバーナイト配送など、多様な配送オプションを提供してきた。今回の30分配送はその延長線上にありながら、配送リードタイムの極小化という点で新たなフェーズに突入したことを示す。

 小売各社が即時配送モデルの採算確保に苦慮する中、アマゾンがどこまでコストと利便性を両立できるかは、業界の注目ポイントとなる。同時に、ホールフーズとアマゾンの融合が進むことで、グローサリー領域における顧客接点の一体化も加速する可能性が高い。