米国の食品・ドラッグストアチェーンであるアルバートソンズ・カンパニーズが、リテールメディア戦略の一環として新たな店内広告ソリューションを立ち上げた。6月にフランス・カンヌで開催された「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」において、同社のリテールメディア部門であるアルバートソンズ・メディア・コレクティブが、「店内デジタルディスプレイネットワーク」の開始を正式に発表した。

 従来の紙媒体や棚前ポップに代わり、店内の重要な導線に設置されたデジタルサイネージが動的な広告表示を行うことで、来店客にリアルタイムで訴求力の高い情報を届ける。今回の店内デジタルディスプレイネットワークは、インタラクティブかつインテリジェントなショッパーエンゲージメント技術に強みを持つストラタキャッシュとの戦略的提携によって実現した。

 ストラタキャッシュは世界中の小売業・飲食業・交通業界向けにデジタルディスプレイを提供しており、400万台以上のスクリーンへの配信実績を持つ。高度なセンサー技術やAI活用により、商品発見の促進や広告配信の効果測定がリアルタイムで可能となる。

 アルバートソンズ・カンパニーズのCCO(最高商務責任者)であるジェニファー・サエンツ氏は、「購入の瞬間、すなわち意思決定の最前線において関連性の高い広告を提示することが小売体験の質を大きく左右する。ブランドパートナーが顧客に直接リーチし、魅力的なオファーや食の提案、タイムリーな情報を提供することが可能になる」とコメントしている。

店内メディアに注目度高まる

 広告業界においても、店内メディアへの注目度は高まっている。調査会社eマーケッターによれば、店舗で買い物をする成人の75%が店内広告に気付きやすいとされており、モーニング・コンサルトによる調査もこれを裏付けている。さらに、2028年までに米国市場における店内リテールメディア支出は10億ドルを超えると予測されている。

 今回のネットワーク導入は、まずアルバートソンズ・カンパニーズの主要地域にある一部店舗にて、今夏より試験的に開始される。エントランスや青果売場といった来店者の動線上に設置される大型の高精細ディスプレイが特徴であり、視覚的に強いインパクトを与えるとともに、広告効果を測定できるようになる。

 ブランドパートナーは「実際に何回再生されたか」「購買にどれほど寄与したか」「どれだけ売上高が向上したか」といった具体的な指標をもとに広告効果を把握できるようになる。

 アルバートソンズ・メディア・コレクティブでメディアおよび測定部門を統括するリズ・ローチ副社長は、「ストラタキャッシュの閉ループ型計測技術により、購入直前のタイミングでメッセージを届け、効果を可視化できる。ネットワークの本格展開に合わせ、我々の測定機能も一層強化されるだろう」と述べている。

買い物客の「意思決定の最終段階」に訴求

 こうした店内広告は、いわゆる「フルファネル広告」の中でも最終段階に位置づけられる。ブランドは買い物客の購買意思決定直前に情報を届けることができるため、効果が高いとされる。特に、食事や間食のインスピレーション、商品の使用方法、健康志向に基づいた提案などをデジタルスクリーンで提示することで、顧客の関心を引き、実際の購買へとつなげることが可能となる。

 さらに、店内音声放送やプロモーションとの組み合わせ、外部ではコネクテッドTV(CTV)、ディスプレイ広告、ソーシャルメディアでの動画キャンペーンなどと連動することで、広告の波及効果はより広範囲かつ高次元になる。

 今回のパイロット導入において、ブランド第一弾として名乗りを上げたのはグローバル食品大手モンデリーズ・インターナショナルである。同社のオムニチャネル・アクティベーション担当カスタマーディレクターであるメリッサ・ピットモン氏は、「我々は“意味のある瞬間”で顧客にリーチすることを重視しており、購買判断を行う棚の前こそが、その最たるものだ。アルバートソンズのデジタルディスプレイは、その瞬間にインスピレーションを与える非常に有力な手段であり、我々のデジタル戦略を強力に補完する存在だ」と語っている。