ウォルマートは5月、米メリーランド州フレデリックに過去最大規模となる集中調剤施設を稼働させた。延床面積10万2000平方フィート(約9500㎡)を誇るこの最先端の施設は、1日あたり最大10万件の処方処理能力を有し、全米16州およびワシントンD.C.に展開する700以上の店舗を支援する体制を整えた。

 ウォルマートがこのような中央調剤機能を拡充する背景には、オンラインでの処方薬注文や、より迅速で柔軟な薬局サービスへの需要の高まりがある。同社は2026年末までに全米のウォルマート薬局の約90%をカバーする中央調剤ネットワークの構築を目指しており、フレデリック施設はその中核を成す存在といえる。

 同施設では、自動計量システム、ロボティクス搬送、広範なコンベアラインといった先端技術を導入し、錠剤のカウント、ラベル貼付、キャップ閉め、仕分けといった処方薬の一連の工程を自動化。薬剤師、薬局技術者、患者安全担当者が連携することで安全性と効率性を両立させている。

 この中央調剤の導入により、店舗に勤務する薬剤師の業務負担が軽減され、より多くの時間をワクチン接種、慢性疾患の管理、感染症検査、患者カウンセリングといった臨床サービスに振り向けることが可能となる。実際、中央調剤の活用により薬剤師と患者の対面時間が30%増加するという調査結果も出ており、医療サービスの質向上が期待される。

 ウォルマート薬局部門のケビン・ホスト上級副社長は「この施設は我々の顧客ケアの新たな章を開くものだ。効率化により薬剤師が患者の前に立つ時間が増え、信頼の構築と健康成果の改善に寄与できる」と語る。

アリゾナ州、ミズーリ州も来年稼働

 加えて、アリゾナ州フェニックスおよびミズーリ州リパブリックにも同様の施設が26年に稼働予定。薬の再調剤プロセスの簡素化や、薬剤師によるケアの質的向上を目指す同社の戦略の一環と位置付けられている。

 ウォルマートの薬局は全米にある4000以上の店舗の多くが医療提供者不足地域に立地しており、地域住民にとってアクセスしやすい医療機関の役割を担っている。実際、臨床サービスの75%は午後5時以降、すなわち他の医療機関が閉まっている時間帯に提供されているという。

 薬局マネージャーのウゴ・ヌワチュク氏は「処方薬の配達、病状管理支援、旅行前のワクチン接種など、患者は多様なニーズを抱えている。我々がその頼れる存在であることを日々実感している」と述べている。

 今回のフレデリック施設は23年初頭から開発が進められていたもので、同社のヘルス&ウェルネス戦略における大きなマイルストーンでもある。業務効率化により、薬剤師が本来果たすべき「対人ケア」に専念できる環境が整い、地域医療の一翼を担う存在としての役割がより一層強化されることとなる。