アマゾンは、買い物の利便性と効率性を高める新機能として、生成AI(人工知能)を活用した音声による商品要約機能の試験運用を開始した。商品ページに掲載された詳細情報やレビュー、あるいはウェブ上の情報をAIが分析・要約し、音声コンテンツとして提供する。顧客は「ハイライトを聞く」ボタンをタップすることで、商品に関する要点を音声で確認することができる。
この機能の導入背景には、近年、オンラインショッピングにおける情報過多の課題がある。アマゾンでは、数ある商品の中から適切な選択を行うために、多くの顧客がレビューや比較情報を読む必要に迫られていた。
今回の音声要約機能は、そのような調査の手間を軽減することを目的としている。買い物をしながら、あるいは移動中や家事の合間にも‟ながら聞き”が可能となるため、効率的かつ直感的な意思決定を支援するものとなっている。
商品の情報を音声で“ハイライト”
利用方法はまず、アマゾンのショッピングアプリを開き、対象となる商品の詳細ページにアクセスする。商品画像の下に「ハイライトを聞く」ボタンが表示されていれば、そのボタンを押すと、短い音声会話が再生され、商品の特徴やメリットが伝えられる。
現在、この機能はアメリカ国内の一部ユーザーに限定して提供されており、対象商品も限定的だが、今後数カ月のうちにより多くの顧客・商品へと順次拡大される予定。特に、購入前の検討が必要な高価格帯または複雑な商品カテゴリーにおいて先行導入されており、実際の対象商品例は以下のとおり。
・ニンジャ・ブレンダー
・オーシーイーエー・ウンダリア・アルゲ・ボディオイル
・レインシャワー・スプラッシュポンド・トドラー用ウォーターテーブル
・セーフレスト・100パーセント防水・キングサイズ・マットレスプロテクター
・ショックス・オープンラン・プロ(オープンイヤー型ブルートゥース骨伝導スポーツヘッドホン)
アマゾン独自開発の言語モデル
この機能を支える技術の中核には、アマゾンが開発した大規模言語モデル(LLM)がある。アマゾンの商品カタログ、カスタマーレビュー、さらには外部ウェブサイトからの情報を統合し、ナチュラルな会話形式の音声コンテンツとしてスクリプト化する。その後、自動で短時間の音声クリップに変換され、アプリ上で配信される。
アマゾンが進める「会話型ショッピング」戦略の一環であり、顧客の意思決定支援とショッピング体験の向上を狙った複数のAI機能と連携している。代表的なものには、以下のような機能がある。
・ルーファス:商品やカテゴリーに関する質問にリアルタイムで答えるAIショッピングアシスタント。顧客が抱える疑問に対し、会話形式で答えることで、まるで店員とやり取りしているような感覚を提供する。
・ショッピングガイド:100以上の製品カテゴリーを対象に、生成AIを用いたガイダンスと推奨商品をまとめる機能。製品比較や購入検討をより効率的に行える。
・インタレスト:顧客の興味・関心をAIが学習し、それに合致する新商品の情報を継続的に提案する。
・レビュー要約機能:レビュー全体から共通のテーマや意見を抽出・要約し、商品に対する顧客の感想を一目で把握できるようにする。
・バイ・フォー・ミー:アマゾンで取り扱いのない商品について、他社ブランドのECサイトからの代理購入をAIが自動で行う実験的機能。人間の介入なしに購入手続きを完了させることが可能となる。
音声コンテンツの導入は、視覚に頼らない新たなUX(ユーザー体験)の可能性を切り拓くものであり、視覚障害を持つユーザーや高齢者にも利便性が大きいだろう。