オランダの大手食品小売りアホールド・デレーズは、2030年までに欧州で展開する食品PBにおけるタンパク質の販売比率の50%を植物由来にするという新たな目標を発表した。健康的で持続可能な食生活への移行を促進し、同社の環境負荷を低減する戦略の一環である。
アホールド・デレーズの温室効果ガス排出量の約95%は、自社の直接的な事業領域ではなく、バリューチェーン全体に起因するものである。特に、動物由来のタンパク質を含む製品は、土地利用、飼料の生産、加工過程において大きな環境負荷を伴う。そのため、植物由来タンパク質への段階的なシフトは、気候変動対策の重要な柱となる。
同社のヨーロッパ・インドネシアCEOであるクロード・サライユ氏は、「植物由来のタンパク質へ移行を進めると同時に、動物性タンパク質を提供する生産者やサプライヤーとも協力し、環境負荷の低減に取り組んでいる。多様な食の嗜好を尊重しながら、より多くの消費者に植物由来食品の選択肢を提示し、購買行動の変化を促したい」と語る。
健康的で持続可能な食品システムへ
アホールド・デレーズの各地域ブランドの戦略は、以下のように市場ごとの消費者の嗜好に合わせて調整されている。
1)植物由来の製品ラインアップの積極的な拡充と、低炭素の動物性タンパク質の品揃えの提供
2)農家やパートナーとの協力による、動物性タンパク質商品の排出量削減
3)ロイヤルティプログラムやインセンティブを活用し、植物性食品を選びやすくする施策
4)情報発信や教育活動の推進による、より健康的で持続可能な選択肢の魅力の発信
こうした取り組みの一環として、オランダの食品ブランド「アルバート・ハイン」は、30年までに植物由来食品の売上比率を60%にするという独自の目標を設定している。
消費者や国際社会の意識変化が背景
アホールド・デレーズの方針は、国際的な環境・健康政策とも一致している。たとえば、非営利団体EAT(イート)のランセット委員会の報告書では、「植物性食品を中心とした食生活は、健康と環境の両面でメリットをもたらす」と結論づけられている。また、欧州委員会の「Farm to Fork(農場から食卓へ)」戦略においても、持続可能な食品生産とタンパク質移行が重要なテーマとして掲げられている。
消費者の意識も変化している。環境問題への関心の高まりや、健康志向の強化により、植物由来食品への需要は世界的に増加している。特に若年層を中心に、動物性食品の消費を抑える「フレキシタリアン(柔軟な菜食主義者)」が増えており、アホールド・デレーズの戦略はこうした市場動向に対応したものといえる。