ストアギークは5月29日に「メーカーと小売、現場の最前線から見えたリテールメディアの期待と課題」と題するウェビナーを行った。同社が開発した「ストアギークサイネージ」は小売店の定番棚前に特化したリテールメディアで、今年2月からは大手ドラッグストアチェーンのウエルシア薬局やツルハグループなど全国11流通での横断広告配信がスタートしている。
今回のウェビナーでは、実際にストアギークサイネージを導入・活用している、ウエルシア薬局商品本部マーケティング部の竹見憲一氏(写真中央)、サンスターグループオーラルケアマーケティング部GUMグループコミュニケーションチーム長の和田知尋氏(写真右)を招き、ストアギーク取締役の安藤尚人氏(写真左)も交えて、三者でリテールメディアの取り組み状況や期待について語られた。
サンスターグループの和田氏は、ストアギークサイネージ導入の効果について「『ハグキラボ』という商品の新規購買率が36.2%アップしたほか、店舗入口で歯周病予防の啓発をすることで、オーラルケアカテゴリー自体の売り上げが1.5%アップしたり、アプリと連携することでクーポン利用率が13%アップしたりした。今後は、顧客データ活用による長期でのLTV育成施策などにも積極的に取り組んでいきたい」と語った。
また、ウエルシア薬局の竹見氏は「実施したブランドだけでなく、カテゴリー全体の売り上げ上昇にもつながるというのは、小売りとしては非常にありがたい。戦略の幅が広がる」と説明した。
リテールメディア広告市場において、デジタルサイネージの規模は2024年に170億円、27年には380億円と推計されている。ストアギークの安藤氏は、規模拡大に向けた課題解消について、以下のように語った。
「今後はメディアサービスとしての価値をつくっていかなければならない。大前提として、お客様は売り場に商品を買いに来ているので、メディアを見に来ているわけではないため、視認性を高める難易度は高い。同時に、売り場に合ったコンテンツの配信や最終的な効果検証も重要。こういった課題を解消するために、ストアギークは売り上げの7、8割を占める定番棚に特化して設置できる独自のデバイスを開発。購買意思決定を後押しできる、新しいメディアとして展開している」
ストアギークの調査によると、ストアギークサイネージ設置店でのオーラルカテゴリ購買客のうち、サイネージ広告視聴に対して48.7%が「商品が選びやすい」「購入の決め手になった」といった好意的な回答を示しているという。
「やはり、お客様が購買モードに入っているときにコミュニケーションできるという部分が非常に優れている。そのため、購買はもちろん、認知やブランディングの面でも効果があると考えている。いろいろなテストをやるにしても、より突っ込んだデータ検証ができる」(和田氏)
「ウエルシアの店舗内の媒体から情報発信することで、『この商品はウエルシアに売っている』ということがすぐにわかるので、購入までのイメージがつくりやすい。そういった部分でもリテールメディアの価値は高い」(竹見氏)
今後、メーカーにとっても小売業にとってもリテールメディアの重要性が増していきそうだ。