エイチ・ツー・オーリテイリング傘下の阪急阪神百貨店は今期、海外富裕層の顧客化を図る狙いだ。

 23年度の通期決算説明会で山口俊比古社長は、阪急うめだ本店(大阪・梅田)の外商サロンを今秋をメドに‟体験型のVIPサロン”へと刷新することを明らかにした。

 コロナで閉店していた13階のレストラン(300坪)をVIPサロンにリニューアル。「これまでの寛ぎをメインとした空間から、外商員が事前に顧客の要望をヒアリング、それにマンツーマンで応えていく場。もしくは取引先とタッグを組み、一人ひとりに合わせたパーソナルな提案を行う場とする」(山口社長)。

 具体的には「デジタルを使った没入体験」「店内と屋外を使った提案」「試食」などを挙げた。

 この取り組みは国内だけでなく、海外の富裕層客を取り込む狙いもある。山口社長は、海外の富裕層客について「母国では特別なサービスを受けているのに、外国に行くといちツーリストとして扱われてしまう」と指摘。これを踏まえ同社では、本VIPサロンを通じて、母国以上の買い物体験の提供を目指し、他社との差別化を図る狙いだ。同社では免税手続きの際、高額の買い物をしたお客にはフラグが立つ仕組みを設けており、その数は現在約2万名という。今後はこれらのお客をVIP会員に誘引し、本サービスにつなげていきたい考え。

 阪急阪神百貨店の23年度の売上高は、前期比17.2%増の5737億円、営業利益218億円と過去最高を記録した。インバウンド売上においても、円安による客単価の上昇から、過去最高だった2018年度の2倍となる800億円を叩き出した。特に阪急うめだ本店は、地域一番店として国内・インバウンド売上ともに成長。 売上高は3000億円を超え過去最高となった。

 阪急阪神百貨店では今期、本サロンオープンを皮切りに、インバウンド売り上げ1000億円を目指す。