ウォルマートが、米国小売業向けのデータ分析サービス「ウォルマート・ルミネート」をメキシコ、カナダへ拡大する。
ウォルマート・ルミネートは、店舗販売からEコマースまでオムニチャネルでの顧客の購買行動をきめ細かく分析し、取引先に提供するもの。2021年に事業部門ウォルマート・データ・ベンチャーズを設立して、リアルタイムデータを蓄積してきた。
顧客の行動と認識、チャネルごとの動きを把握
データ分析は3つのカテゴリーからなる。「顧客行動」はEコマースや店舗での買い物かごから購入までの動きを把握し、1時間ごとや1日ごとのトレンド、店舗やEコマースの内訳などの詳細をレポートする。
「顧客認識」は、顧客との会話にアクセスすることで、満足度や不満点など購入の背景にある理由を分析することができる。独自のコミュニティを活用することで、平均回答率は30〜40%に達し、最短1〜2日で調査が完了する。
「チャネル・パフォーマンス」は、完全なオムニチャネル・データを活用することで、顧客が購入するまでの経路を把握し、棚の在庫状況をより的確に把握することができる。店内、配送、ピックアップ、自宅または店舗への配送、店舗からの配送にまたがる内訳で、チャネル戦略を練ることができるようになる。
2022年にはヴォルト・システムズ社を買収し、顧客が適切な商品を適切な場所で適切な時間に見つけられるようにする「マーチャンダイジング・リソース」へのオンデマンドでの可視性を向上し、店舗運営者や一次サービス・プロバイダーへの付加価値を高めたという。
最大手サプライヤーの9割が活用
現在ではウォルマートの最大手サプライヤーの90%がウォルマート・ルミネートの認定利用者である「チャーター」に登録しており、中小のサプライヤーの中には全契約数の約50%を占めるところもある。
まずメキシコの「ウォルメックス」にルミネートのプラットフォームが導入され、今年後半にはカナダの「ウォルマート・カナダ」にも拡大する。米国での戦略を反映して、顧客行動→チャネル・パフォーマンス→顧客認識と段階的にシステムを充実させていく予定だ。
キンバリー・クラーク社のウォルマート社営業担当副社長、アマンダ・クスール氏は「ウォルマート・ルミネートは当社の戦略に不可欠な役割を果たしている。メキシコ、カナダへのシステムの拡張で、データ主導の意思決定がさらに強化されるだろう」と評価している。
小売業界向けの使い勝手の良さと、実店舗販売での豊富なデータを武器に、アマゾン「AWS」などのクラウドサービス大手に対抗していく戦略だ。