ウォルマートがアンスパン社の「ベガ3D製織技術」を活用したアパレル廃棄物の削減に挑んでいる。無駄な在庫を省き、原料の再利用によって使用後の廃棄もなくすことが目的だ。パイロット・プロジェクトでは男性用チノパンに採用されている。

 アンスパン(unspun)とは「(糸が)紡がれていない」を意味しており、生地を裁断し縫製する工程を飛び越えて、糸から直接衣服に仕上げるのがベガ3D製織だ。そのため、生地の切れ端が生じない。アンスパン曰く(従来より)「10倍速く、5倍安い」ため、生産リードタイムを従来の数カ月から数日に短縮できる。

 製作工程の削減により、見込み生産による在庫処分ロスも減らすことができる。3D織機を2030年までに全米に350台設置することで、アパレルの「オンショア(現地生産)・オンデマンド生産」が可能になるという。世界の二酸化炭素排出量の最大10%に絡むと言われるアパレル業界を合理化して、排出量を1%削減することがアンスパンの目標だ。

「シンデレラ」の魔法のガウン

 アンスパンの共同設立者兼最高製品責任者のベス・エスポネット氏は「物語『シンデレラ』で、フェアリー・ゴッドマザーが杖を振ると、プリンセスになる女性の周りにきらめく青いガウンが形作られる場面がある。布地が実体化し、シンデレラのためにオーダーメイドされたガウンが出来上がる、夢のような瞬間だ。アンスパンがベガ 3D織物技術で行っていることは、まさにそれだ」と語る。

 3Dで作った縫製品には縫い目がないため、より丈夫で軽い製品になる。また、ラベルは縫い付けるのではなく衣服に織り込まれるため、より快適な着心地を生み出す。よりきめ細やかなカスタマイズも可能になる。

 「次世代のアパレルを考え、より自動化され、オンデマンド生産が可能なプロセスを構築することができれば、多かれ少なかれ米国を離れた産業が戻ってくることができると信じている。ウォルマートほど積極的にそれを考えている企業はほとんどなかった」とアンスパンの共同設立者兼最高技術責任者(CTO)のケビン・マーティン氏は語る。

 ウォルマートは、2025年までに自社事業の50%を再生可能エネルギーで賄い、2035年までに100%を再生可能エネルギーで賄うという目標を掲げている。2017年には、サプライヤーと協力し、2030年までに製品バリューチェーンにおける温室効果ガス排出量を1ギガトン(10億トン)削減、回避、隔離するという目標を発表。今年2月21日には、5900社を超えるサプライヤーの協力を得て、予定より6年前倒しでこの目標を達成したことを発表している。