トライアルホールディングス（HD）は3月21日、東京証券取引所グロース市場に上場した。約2285万株を1株1700円で売り出し、新規株式公開（IPO）の規模としては、今年最大の388億5000万円となった。株価は公開価格を30.3％上回る2215円の初値がつき、時価総額は2616億円に到達した。
同社は昨年4月にグロース市場への上場を計画していたが、金融機関の破綻などの混乱が株式市場に与える影響を考慮し、手続きを延期していた。その後、今年2月14日に東京証券取引所より新規上場が承認されたことを再度発表、今般の上場に至った。記者会見に登壇した亀田晃一社長は、上場の狙いについて、「これからの環境変化でいろんなビジネスチャンスが生まれる中、銀行調達だけでは限界がある。今回の上場で投資家さんの理解を得ながら、応援を得られやすい環境が作れると思う。投資のチャンスに柔軟に対応し、成長を図りたい」と語った。
トライアルHDは昨年12月末時点で、九州を中心に311店を展開している。中で全体の約6割を占める主力業態が4000㎡規模のスーパーセンターだ。近年の生鮮・惣菜強化の取り組みが奏功し、既存店売上高は高い伸びで成長。収益性も高まっているという。また直近ではコンビニサイズの「スマート」業態を中心とした小型店の出店もじわり増えている。
同社は上場で調達する資金を活用し、これまで控えていた出店を加速させる意向だ。業態としては「スーパーセンターを軸に、今後は機動性の高い小型店にも注力していく」（亀田社長）考え。また物流センター、プロセスセンターといったサプライチェーンのインフラ整備にも投資を振り向けていく。
併せて、トライアルHDが継続して力を入れるリテールテックの研究もさらに強化する。同社はグループのRetail AI社と協業し、レジ機能付きショッピングカートやAIカメラなどを積極的に導入しており、無人店舗の実現も視野に入れる。今回の上場を機にDX投資もさらに推し進める構えだ。
（冒頭写真 記者会見に登壇したトライアルHDの亀田晃一社長＜左＞とRetail AI社の永田洋幸社長＜右＞）
