主力の餃子の売り上げがコロナ後約1.5倍に
「おうちで楽しむ街中華」。中華専門店「大阪王将」の冷凍食品を製造するイートアンドフーズが、コロナ禍を機に打ち出した新コンセプトだ。外食に行きづらい環境が長く続いた中、同社は自宅でも本格中華が手軽に楽しめる価値を訴求すべく、メニューのラインアップを拡大。また定番の餃子では継続的な磨き込み、レシピ提案などで支持を広げつつ、直近ではプチ贅沢に対応した高付加価値品も投入。新規層獲得と市場の深掘りを両面で進めている。
「忘れもしない、2020年の2月末。休校の報道が出た翌日にものすごい量の注文をいただいた」。コロナ第1波をこのように振り返るのは、営業本部市販統括の野村壮太執行役員だ。言わずもがな、コロナ禍を経て冷食の需要は一気に高まった。ただ重要なのは、この3年間でお客の冷食に対するイメージ、使われ方も大きく変容したことだ。「改めておいしい・便利ということで、若年層を中心にユーザー・リピーターが増えた。これまではどちらかというと保存食的な捉え方をされていた冷食が、〝今日食べるおかず〟として利用されるようになった」(野村執行役員)のだ。
需要の高まり、使われ方の変化に応じ、イートアンドフーズは冷凍中華カテゴリーを総体として強化する方針を策定。「おうちで楽しむ街中華」のコンセプトの下、これまで手薄だったラーメンや焼売、小籠包なども含めた品揃えの拡充に取り組んできた。商品本部商品企画開発部の山本邦彦部長は、「私たちには外食で培ったノウハウがある。店舗のメニューの味付け、見た目などを冷食に落とし込みながら商品の幅を広げてきたことがお客様のご支持につながった」と胸を張る。
「おうちで楽しむ街中華」のコンセプトで売り上げの底上げを果たした同社だが、一番の牽引役となったのはやはり餃子だった。中でも「大阪王将 羽根つき餃子」「大阪王将 ぷるもち水餃子」の2大看板商品は、それぞれ売り上げがコロナ前比で約1.5倍に伸長。コロナで改めて支持を積み上げた形だ。
「羽根つき餃子」は、パリッとした食感、見た目の楽しさが既にお客に浸透していたが、水いらず油いらず、フタいらずの便利さがコロナでより広く認知された。「特にフタいらずは他社さんにはない訴求ポイント。以前かた打ち出していたが、使われる機会が増えたことで、便利さを実感していただけたのかなと思う」(山本部長)。
一方の「ぷるもち水餃子」ではこの間、水餃子としてそのまま食べるだけでなく、料理の素材として使う提案に力を入れてきた。パッケージの裏面やホームページでもレシピを紹介。例えばスープに入れたり、あんかけにしたり。茹でた後さっと冷水でしめれば、そうめんや冷やし中華の付け合わせにもぴったりだ。また平打ちパスタの代わりにホワイトソースとチーズをのせて焼けばラザニア風にアレンジすることもできる。「ぷるもち水餃子」は冷凍水餃子売り上げ№1ブランドとして、新たな食シーンの提案で市場を拡大、もう一段の拡販へとつなげている。
プチ贅沢に対応した「極み」シリーズを投入
イートアンドフーズは今期、定番品のブラッシュアップに引き続き取り組むとともに、環境変化や新たなニーズに対応した新商品を投入した。それがプチ贅沢な餃子「極み」シリーズだ。
開発の背景として、山本部長は「物価上昇が続く中、経済性とプチ贅沢のメリハリ消費が増えている」と指摘。大阪王将ブランドのこだわりを詰め込み、付加価値に振った一品を目指し開発に着手した。まず「大阪王将 極みの大粒肉餃子」では、餃子には珍しく牛のすね肉を使用。豚肉と黄金比でブレンドし、コクと旨みを引き出した。また、羽根つき餃子の4倍近い時間を使って練り上げることで、ぎゅっと詰まった肉感とジューシーさを実現。1粒30gと食べ応えも十分だ。
もう一品の「大阪王将 極みのもっちり厚皮 肉汁爆弾餃子」はぷるもち水餃子の厚皮を使い、小籠包の製造で培った技術を応用。もちもちとした皮の食感と、じゅわっと溢れる圧倒的な肉汁が楽しめる。
3月の発売以降、売り上げは2品とも好調だ。「SNSを見ると、お酒と一緒に写真を上げられたりしている。狙い通り、ちょっとした贅沢、ご褒美シーンで使っていただけている」と山本部長は破顔。既存の餃子とも使い分けがされており、カニバリはほぼないという。
客単価アップにつながる高単価商品として、小売店からの反応も上々だ。下半期に向け、極みシリーズでは水餃子の投入も予定。野村執行役員は、「冷食は鮮度が高く、味の面でも機能の面でも非常に洗練された食品。そうした啓発とともに今後は高付加価値品の提案にもしっかり力を入れていきたい」と意気込む。
イートアンドフーズは持ち前の開発力を武器に「おうちで楽しむ街中華」の提案を深化、コロナ後の冷食市場をさらに押し広げていく構えだ。