ある意味異色の経歴の持ち主と言えるだろう。大手商社丸紅を振り出しに、複数の小売業に出向し、大手総合卸の国分にも籍を置いた。小売業の事情にも、総合卸の事情も知り、菓子専業卸の戦略を導き出している。その菓子卸業界の内情は決して安閑とできるものではない。M&Aの可能性を問うと、「量を追っても意味がない。あるとすれば、質、機能性が高められる企業となら」との答え。勝ち残り、生き残りの鍵もそこにあると見ている。(インタビュアー・栗田晴彦)
菓子は食事代替の需要も結構ある
――コロナで減少した菓子市場が、順調に回復しています。
猪 昨年はコロナ前の19年と比べて販売数量はまだ少ないんですが、販売額はほぼ同水準に戻りました。値上げによる単価アップと、人の流れが増えてコンビニが復活したのが大きな要因です。ただ菓子業界も原材料費、包材費、物流費とコストが軒並み上がっていますし、加えて昨年は三幸製菓さんの工場で火災が発生し、出荷がしばらくゼロになりました。米菓業界2位のメーカーさんの出荷が止まると、本当にモノがないというレベルの事態になって、物価高より商品の確保の方がもっと大変だったんですよ。