物流危機のみならず、現場の過酷な労働状況を白日の下にさらす役割を担うことになってしまった。ヤマト運輸は個人宅配の生みの親。その便利さは、今日、日常生活のインフラとして根付いていることでよくわかる。不本意極まりない事態に切歯扼腕は想像に難くない。それから三年、トップ、役員が総出で現場に足を運び、従業員の本音を聞き改革に努めた。その成果が花開きつつある。(取材・構成 石橋忠子)
残業時間は改革前比で3割超減った
――宅配の物流危機はやはり深刻さを増しているのでしょうか。
栗栖 基本的に厳しい状況は変わっていません。人手不足の一方で、ECの利用や昼間自宅にいらっしゃらない方が増えているという世の中の環境は同じですから。そうした中で荷物を滞りなくお届けする人手を確保するため、私どもこの中期経営計画(17−19年度)では働き方改革と構造改革を柱に据えて色々な取り組みをしてきました。お客様のご理解をいただきながら価格改定をしたり、総量規制をしたり、「PUDOステーション」という宅配ロッカーの設置を進めたり。特にドライバーを中心に労働環境の改善に注力してきたわけです。改革はまだ途上ですが、その成果は出ているように思います。
――実際にドライバー不足が軽減されているのですか。
栗栖 働き方改革の取り組みが世間に知られるようになって、少しずつですが来てくださる方が増えています。それと昨年春から、アンカーキャストという契約社員の採用も始めているんですね。午後1時から9時まで勤務していただく配達スタッフで、こちらも今年4月末で5600人になりました。一方で退職も減少傾向になっていまして、そういう意味では従来の非常に大変だった状況の中からの話ではありますが、一定の改善はしているという風に感じています。