「黄金の味」の濃厚な味わいをにんにく不使用で実現
「冒険、反論、失敗の自由」。創業期から今日に至るまで、エバラ食品工業に受け継がれるスピリットだ。同社が送り出す2023年の春夏向け新商品(2月3日発売)には、まさにこうしたチャレンジ精神が前面に表れている。変化する時代やニーズを捉え、今まで市場になかった商品、開発が困難とされていた商品に積極的に挑戦。長年蓄積してきたノウハウ、技術力をもって実現した独自性溢れる商品がずらり出揃った。
まずは同社の看板商品、焼肉のたれ「黄金の味」シリーズから見ていこう。現在、定番品の「甘口」「中辛」「辛口」に、20年発売の「さわやか檸檬」、その翌年発売の「旨にんにく」を加えた5品を展開する同シリーズだが、今回新たに2品をラインアップに追加する。中でも定番に並ぶニュースタンダー ドと位置付けられそうなのが「黄金の味 濃熟」(360g)だ。「黄 金の味」が持つコク深さ、濃厚な味わいを、なんとにんにく不使用で実現したという画期的な一品だ。
「現在、焼肉のたれの上位ブラ ンドにはほとんどにんにくが使わ れている」。御厨貴志商品開発部長が指摘するように、にんにくは焼肉のたれの味わいを決定づける重要な材料だ。そんな中、エバラ食品はにんにく不使用の「黄金の 味」を開発すべく、「さわやか檸檬」 でこれに初挑戦した。レモンのさわやかな酸味・風味でさっぱりと味わう焼肉を提案。狙い通り、においを気にして 焼肉を控えていた層などを取り込み、客層の間口拡大に貢献した一方、「にんにく不使用はうれしいけど、いつもの『黄金の味』をイメージして食べると少し味わいが物足りない」といった意見も寄せられた。
そこで今回の新商品は、「にんにく不使用でもいつもの『黄金の味』のテイストが味わえる」ことを目指して開発。にんにくを使わずにコクを出すための材料を様々試し、行き着いたのが新たに干しぶどう、完熟トマト、炒め玉ねぎを加えることだった。熟れた食材の旨味、玉ねぎの香ばしさを足し合わせることで、通常の「黄金の味」と比べても遜色のない濃厚な味わいを実現した。味が濃く、肉とよく絡むので、牛肉のほか、豚肉や鶏肉にも合うのが特長だ。
商品開発部の石井敦史商品開発二課長は、「人と会う予定がある時など、においが気になるシーンにもってこい。お弁当のおかずの味付けにもにおいを気にせず使えます」と「濃熟」の使用シーンを提案。また、「今は家族で同じ食卓を囲んでいても好みが細分化している。にんにくは苦手だけど濃厚なたれを使いたいお客様に向けて訴求するなど、今まで取りこぼしていたニーズも取り込みながら幅広い層のお客様にお使いいただくことを目指したい」と意気込みを語った。
もう一つの新テイストが「黄金の味 贅沢林檎」(210g)だ。こちらは23年が「黄金の味」の発売45周年であることを記念し、国産りんごを45%使用して作ったこだわり商品だ。通常の「黄金の味」も原料の約3分の1(33%)が国産りんごだが、同商品は比較して3割以上増量、「黄金の味」史上最大のりんご配合量となっている。 またこの45%というのは、「焼肉のたれとしておいしく味わえ、かつ工場で対応できる最大のりんご配合量」(石井課長)でもあるという。普通、「黄金の味」の製造過程では、粉末の原料を溶かすために水が必要になるが、りんごの量が増えると使える水の量が減る。そのためこれまでの製造工程を見直すなど、大変な手間をかけて開発されたのだ。
そのほか、使用するにんにくを国産に限定する、明確でわかりやすい原料を使用するなど、商品設計は細部までこだわり抜かれている。味わいはりんご由来の甘酸っぱく濃厚な風味が特長。加えて、果実由来のとろみがアップしたことで、肉にたれがたっぷりと絡み、「黄金の味」のおいしさをよりダイレクトに楽しめる。「濃熟」の間口拡大に対し、「贅沢林檎」が目指すのは奥行の拡大。りんごに着目し、エバラ食品のものづくりへのこだわりを存分に示すことで、「お客様にいま一度、『黄金の味といえば国産りんご使用』 『フルーツベースだからおいしい』というイメージを強く印象づけていく」(石井課長)。新商品発売と連動し、プロモーションも23年の初頭から仕掛けていく計画だ。
新商品が発売となる時期からのテレビCMを予定しており、売り上げにはずみを付ける。その後もエバラ食品が制定(一般社団法人日本記念日協会認定)した3月第4土曜日「焼肉開きの日」やゴールデンウイークなどを需要期と捉え、積極的なプロモーションを展開していく予定だ。
一方、「黄金の味」が焼肉以外の幅広いメニューに使えることも継続的に訴求する。テレビCMやホームページを通じての提案のほか、小売りの各売り場、アプリ・SNSとタイアップしたレシピ紹介なども実施。通年での需要喚起につなげたい考えだ。
新商品発売に先駆け、23年1月生産分からはキャップシールに「焼肉のたれ売上№1」を明記する予定。トップブランド「黄金の味」の認知を広げつつ、これまでにない新商品の提案で市場での存在感をより一層高める構えだ。