「体を守る力を高める」商品の需要が伸長

 「冷房で不調になりやすい夏こそ養命酒。生薬の力で血行を良くし、体の内側から温めましょう」

 イトーヨーカ堂の売り場に流れるこの音声。発信源は棚に取り付けられたモニターや電子POPだ。動画でわかりやすく商品特長を紹介し、お客に訴求。これが今年8月、イトーヨーカ堂と養命酒製造が取り組んだデジタルサイネージによる販促だ。

 「コロナ禍で『体を守る力を高める』商品の需要が伸びている。養命酒はまさにチャンスのある商品と見ています」。そう語るのは、イトーヨーカ堂の生活雑貨部マーチャンダイザー矢島聖也氏だ。近年、コロナ対策に免疫力向上を求めるお客が増加。これに対応すべく、ヨーカ堂では昨年度から「薬用養命酒」(1000ml、700ml)の拡販を強めている。養命酒は今や周知の薬酒のロングセラー商品だ。14種類の生薬の成分が血行や代謝を良くし、体の基礎的な機能を整える。「昔ながらの人気商品ですが、効果・効能が時代にマッチしている。改めて取り組む価値がある商品と感じました」(矢島氏)。こうした認識を、養命酒製造の担当者とも共有。より踏み込んだ養命酒の売り込みに向け、両社での企画立案に乗り出したのだ。

 昨年度は「疲れ対策」などの切り口で、養命酒と関連する商品をエンド棚で同時展開。その結果、ヨーカ堂の養命酒の売り上げは1000mlが前年比100.8%、700mlが同113%の伸長を記録した。コロナ拡大中はGMSがお客に敬遠されたこともあり、ヨーカ堂の養命酒の売れ行きは市場の勢いに対してやや低調だった。が、これがテコ入れによって改善。特に700mlが大きく伸長したことに関しては、「エントリーユーザーの取り込みも寄与した」と矢島氏は見ている。

売り場で気づきを与えることでトライアル購買が増えた

 昨年の成果を踏まえ、ヨーカ堂は8月1~31日の期間、養命酒新たな販促施策を実施した。それがデジタルサイネージの展開だ。売り場の棚にモニターや電子POPを設置し、そこでウェブコンテンツ「養命先生」を放映。俳優・草刈正雄が養命酒の効能や飲用シーンなどについて解説する動画を、ウェブに馴染みの薄い高齢者に向けて売り場で訴求したのだ。狙いはもちろん、商品特性の認知を促し、エントリーユーザーの取り込みをさらに加速させることにある。

 チャレンジの舞台となったのは、ヨーカ堂の旗艦店である木場店(江東区)と幕張店(千葉市)だ。まず木場店ではエンド棚の下段に大型のモニターを設置。大画面で動画を流し視認性を高めた。月の後半にかけてはお盆の売り場変更があったが、現場の機転でコロナ再拡大により需要が高まった風邪薬との併売を実施。病中病後の滋養強壮の切り口で養命酒を訴求し、販売の勢いを保つことができた。結果、同店の8月度の養命酒販売数は、1000mlが前年同月比197%、700mlが同175%の大幅増となった。

 一方、幕張店では医薬品売り場の入り口に展示台を設置。そこに電子POPを取り付けることで、普段売り場に立ち寄ることのないお客にも全方位でアピール。その結果、固定客の多い1000mlの月間販売数は前年同月のほぼ横ばいだったものの、700mlについては前年の約7倍となる異常値を記録。また調べてみると、木場・幕張両店で養命酒を8月から新たに購入した新規客も増えた。この結果について矢島氏は、「売り場で気づきを与えることでトライアル購買を増やすことができたのではないか」と分析、施策の手応えに破顔する。

デジタルサイネージの展開の様子(右:木場店、左:幕張店)

 今後のデジタルサイネージの展開については、今回の結果をより精査した上で検討する方針だ。また今回得た知見は、ヨーカ堂の主要客で養命酒のターゲットでもある50~60代以上のお客に、ウェブコンテンツやデジタル販促をどう効果的に打ち出すかの参考にもしていく。

 ヨーカ堂は今後も引き続き、効果・効能が時代にマッチした養命酒の拡販を強化する意向だ。これから冬場にかけては養命酒の売り上げが最も伸びるシーズン。また新規の流入が最も増える時期でもあることから、年末に向けて滋養強壮、冷え対策などのテーマで売り場づくりを計画。ニーズに合った商品を、求めるお客にきっちり響くやり方で提案する。そんな行き届いた店づくりを一層突き詰める構えだ。

売り場で放映した養命酒の特長をわかりやすく伝えるウェブコンテンツ「養命先生」