新型コロナウイルスは消費者の衛生意識を格段に高めた。食品小売業で衛生対策をしていることが消費者の選択基準となり、特に食品を扱うスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニにより厳しい目が向けられている。新型コロナの第5波は収まったが、専門家からはこの冬に第6波の感染再拡大を予想する声も多く挙がっている。そこで除菌・抗菌効果が立証された業務用除菌剤を使うことが効果的だ。

 そしてもう一つ、食品衛生法の改正も食品小売業界に衛生対策を求めている。今年6月1日のHACCP制度化を受け、食品を取り扱う小規模の事業者は、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の管理手法に基づき、各業界団体が作成した手引書を踏まえた衛生管理計画を策定する必要がある。導入状況に不備がある場合は、自治体による改善指導が行われ、それに従わない場合は営業停止などの行政処分もある。

 飲食店ではHACCPに沿った衛生管理計画に基づき、信頼できる事業者からの仕入れが求められる。食中毒が発生した場合には、ただちに営業停止などの行政処分が科せられることもある。実際、昨年7月には食中毒により営業禁止または数日間、営業停止の事業者が連日のように発表されている状況だ。

 HACCPに沿った衛生管理を進める上では、衛生管理計画を従業員に周知徹底することが必要だ。衛生管理では冷凍庫・冷蔵庫や惣菜の食品温度を記録・管理して保存する。また必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取り扱いなどについて具体的な方法を定めた手順書を作成する。食品安全対策や清掃・点検、見だしなみなどについて、現場の従業員への継続的な教育が必須と言えよう。

HACCPの義務化に合わせクラウドのデータ管理を開始

 業務用衛生用品から家庭用まで幅広い各種洗浄・消毒剤を提供するメーカー、サラヤが、スーパーをはじめとする小売業界で、存在感を高めている。

 同社の業務用洗浄・消毒液は、医療用をベースに開発されたものが多く、その品質の高さが評価され、これまで小売業の約7割で採用されている。近年はこれに加え、食品衛生管理や施設での新型コロナ感染対策の整備を支援するサービスの利用も増えているのだ。

 サラヤでは、業界に先駆け、1988年から食品衛生インストラクターを育成し、スーパーや外食産業などに派遣して、正しい洗浄・殺菌方法など食品衛生管理の基本を浸透させる教育と啓発の取り組みを始めた。その後、検査業務やHACCP導入の支援業務にも取り組みを広げ、2013年には、検査データをウェブ上で管理する「GRASP」(グラスプ)のサービスも開始。さらに19年には、食品衛生法が改正され、21年6月にHACCP導入が義務化されたことを受け、HACCPで必要なデータ管理をウェブ上で行う「GRASP-HACCP」を開発した。これにより、冷凍・冷蔵庫の庫内温度から店内調理品の中心温度まで、様々な温度のデータを自動で収集するほか、整理整頓、身だしなみなどの確認もタブレットで行い、結果をクラウドにアップする環境を整えた。サニテーション事業本部の戸室淳治取締役本部長は、「必要なデータを簡単に記録・保存でき、大幅な省力化につながるうえ、本部もリアルタイムでデータを確認できる」と強調。人手不足が深刻化する中、必要なデータ管理やチェックを効率的に行える点をアピールしている。

様々なデータや記録をクラウド上で管理するGRASPは、人手不足による現場の負担軽減に貢献する

 HACCP導入支援に加え、20年からは、新型コロナウイルスの感染対策サービスにも乗り出した。医療機関の感染対策プログラムに詳しいメディカル事業本部や外部の防疫の専門家の監修を受け、小売業のウイルス感染対策のプログラムを作成。CO2濃度や感染しやすい場所の洗い出しなどの実態調査から、改善提案や従業員向け講習まで、感染対策に必要な要素を一通り提供する。

 これに伴い、昨年11月には、事業の担当部署名も「食品衛生サポート部」から、「感染予防・食品衛生サポート部」に変更。さらに、サービスの需要の高まりに合わせて陣容も拡大しており、現在、インストラクターの数は100名を超え、全国の小売業・外食産業・食品製造業の現場で、衛生管理や感染対策の指導に当たっている。

100名を超えるインストラクターが客先に出向き、衛生管理や感染予防の指導に当たっている

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