三菱食品 京谷裕社長/量的縮小経済ではインバウンド対応が重要になる
今期の想定はワクチン接種のスピード次第ですが、業務用は前期以上の売り上げにはなるだろう、ただし前々期には及ばないのではと見ています。それとこれまでの反動からリベンジ消費が来るだろうと。期間はワクチン接種の浸透具合と皆さんの安心感の戻り方によるでしょうが、できればゆっくり1年ぐらいは続いてほしいなと思います。
それともう一つ、注目の要素がインバウンドです。結局のところ、コロナの1年で家計の食料支出額は全く変わっていないんですね。外食が減って内食が増えた。この点は大きな変化ですけれど、トータルではほぼ横ばいです。一方でインバウンドですが、2019年の訪日外国人観光客は3200万人、この時の彼らの食に関わる消費が1.3兆円ほどです。コロナからリカバリーできれば、こちらのほうがもっとプラスの影響があるかなと期待しています。リベンジ消費が終われば、消費のトレンドは量的縮小に戻ってしまいます。その意味でも重要なのはインバウンド対応。地域の観光産業をどうやってもう一度盛り上げていくか。弊社も地域経済の立て直しにしっかりと貢献していきたいと考えています。(5月28日の20年度決算説明をもとに構成)
日本アクセス 佐々木 淳一社長/経営課題解決を先送りせず最優先で取り組む
コロナウイルス感染拡大により食品業界を取り巻く環境は大きく変化しています。グローバルでサプライチェーンは寸断され、時短営業、都市・駅前の人出の減少などにより外食、コンビニの業務活動は低下。一方、内食需要や巣ごもりを受け、スーパーマーケット、ドラッグストア、Eコマース、デリバリー事業の売り上げは急拡大している。そして、外出自粛や3密回避、テレワーク拡大は、消費者の生活様式を大きく変えました。
こうした変化を受け、企業活動では、物流効率や生産性向上に向けた業務改革が急務となり、デジタル化も一気に加速していかねばなりません。持続可能な社会の実現に向け、企業の社会的責任として、SDGsの取り組み推進も不可避です。
昨年度は、コロナに対応し足元を固める1年として、単年度の経営戦略を策定。コロナで顕在化した当社の経営課題の解決と社会の構造変化に対応すべく、業務改革断行の年としてスタートしました。しかしながら棄損した経営基盤の再構築に追われ、業務改善は道半ばの状況です。今年度は、顕在化した経営課題を先送りせず、解決を最優先する。それに向けて経営テーマは「変革2021」と設定しました。(5月28日の20年度決算説明をもとに構成)
国分グループ本社 國分晃社長/食を起点とした地方創生に取り組む
この間、コロナで大きな打撃を受けたチャネルが業務用とコンビニでした。コンビニさんは人流の戻りとともに徐々に持ち直していますが、ホテル、居酒屋さんなどは今後も厳しい状況が続きそうです。ここに商品を卸す専業卸さんも厳しい中では、私どもがノウハウを共有し、経営の立て直しをお手伝いする取り組みにも力を入れていきたい。こうした一つひとつのことが長計の「共創圏」ビジョンにもつながってきます。
スタートアップ企業と新たなビジネスモデルを共創する「国分グループアクセラレーター2020」から広がっている取り組みもあります。例えば、産業観光プラットフォーム事業を展開するmyProduct社と連携して行うのは、宮城県南三陸町の魅力的な商品や体験プランの発掘・発信。両社からエリアに駐在員を派遣し、地域の方々と食を起点とした地方創生を進めています。開発した企画商品は、myProduct社のサイト「クラフトリップ」で展開するほか、当社のクラウドファンディングサイト「食と酒の未来勘所」でも紹介。売り上げ的には決して大きなものではありません。それでも地域密着全国卸を目指すにあたり、こうした取り組みこそがとても大切だと思っているんです。
加藤産業 加藤和弥社長/EDLPは必ずしも物流効率化にはつながらない
コロナで景気が悪化し、低価格志向が強まったという声は聞きますが、実際に景気が悪化したのかはわかりません。例えば、10人中7人の収入が下がれば、消費に対するマイナスインパクトは大きくなりますが、10人中2人が下がっただけなら、消費マインドへの影響は限定的です。ただ、その2人の下がり方が著しいと、平均した場合、大きく下がって見えてしまう。今の状況はこちらでしょう。実際、今年の夏の消費でも、平均これだけ下がったという話は出ますが、具体的にどのくらいの割合の人が下がったかは耳にしません。DSが活況を呈しているのは事実ですが、それは経済的な要因で価格志向が強まっていることもあるでしょうが、どうせ買いだめするなら安いところでという意識も働いているからではないでしょうか。
価格志向と言えば、チラシ販促ができないのでEDLPに切り替えるところが増えています。そうなると物量が平準化され、卸の利益が出やすいと見られがちですが、単純にそうとも言えません。多くのチェーンでは、特売は計画的に実施するうえ、一括配送するので、むしろ効率的になる事も多い。したがって、EDLPになれば必ず物流が効率化するわけではないのです。
三井食品 柴田幸介社長/コンビニ、外食の変化対応をしっかり支える
この上期はコロナの影響が想定以上に長引いており、厳しい事業環境にあります。ただワクチン接種は進んできている。それが1年前と今年の大きな違いだと認識しています。
私どものお客様であるコンビニと外食の両業界をどう見ているか。コンビニは昨年、人流の減少によって非常に大きな影響を受けました。ですが我々の重要なお客様はいち早く対策を打たれて、業績を回復されている。楽観視はできませんが、商品供給でしっかり支えていきたい。
外食も厳しい状況が続いていますが、これもワクチン次第で需要は戻ってくるはず。そして必ず反動需要も生まれてくると見ています。9月前後は逆にしっかり供給体制を整えないと反動需要に応えられないのではないか、とすら考えている。ただニューノーマルの生活習慣が一定程度定着していますので、反動需要で大きく跳ねたとしても、2年前に戻りきることはないでしょう。むしろデリバリーやテイクアウトなど新しい売り方、買い方が定着してくることも容易に想像されますので、私どももそうした変化への対応に果敢にチャレンジしていかないといけないと思っています。(6月23日の20年度決算説明をもとに構成)